群大ら,正・負極内のリチウム組成変化を電池動作下で観察

群馬大学,高輝度光科学研究センター,トヨタ自動車,立命館大学,京都大学は共同で,大型放射光施設SPring-8の高輝度・高エネルギーの放射光X線を用いて,動作下にある市販のリチウムイオン二次電池から,リチウムイオン濃度分布を測定し,正・負極内のリチウム組成変化を同時に明らかにすることに成功した(ニュースリリース)。

コンプトン散乱法は,100keV以上の高エネルギーX線を使用する。高エネルギーX線は,高い物質透過能を持つため,破壊することなく電池の内部反応を測定することができる。研究グループは,SPring-8のビームラインBL08Wにて高輝度・高エネルギーX線を用いたコンプトン散乱法により,市販のリチウムイオン二次電池(VL2020)を充放電させながら,コンプトン散乱X線スペクトルの測定を行なった。

得られたコンプトン散乱X線スペクトルに,以前,研究グループが開発したSパラメータ解析法を適用することで,リチウムイオン濃度分布を得た。その結果,充電時にセパレータと負極との界面付近にリチウムイオンの偏析を示唆するリチウムイオン濃度の高い領域が存在することを観測した。

さらに,リチウムイオン濃度についての検量線を用いて,動作下におけるバナジウム酸化物正極とリチウムアルミ合金負極のリチウム組成の変化を同時に明らかにすることに成功した。

この手法の特長は,高い物質透過能を有する高エネルギーX線を用いた分析手法であるため,非破壊で元素を定量することが可能であることと,リチウムイオン濃度分布を構成する画像のそれぞれの画素がコンプトン散乱X線スペクトルからできているため,リチウムイオンの定量情報を持つことにある。

リチウムイオン二次電池を開発するにあたり,電極内の反応分布を,その反応下で観察することは重要。この研究のリチウムイオン濃度分布を用いた定量法がその一助となり,リチウムイオン二次電池の高性能化に資することが期待されるとしている。

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