東大ら,多糖類からゼロ複屈折ポリマーを開発

東京大学と北陸先端科学技術大学院大学は,多糖類の1つであるプルランを出発原料とし,プルランの持つ特徴的な分子構造を保持したまま,簡単なエステル化により,光学特性に非常に優れたゼロ複屈折ポリマーの開発に成功した(ニュースリリース)。

液晶ディスプレーは,スマートフォン,タブレットPC,液晶テレビなどに広く用いられている。液晶ディスプレーの基本構成材料の1つである偏光板を保護する目的で,さまざまなポリマー保護フィルムが使われている。

一般的なポリマー保護フィルムは,セルローストリアセテート,シクロオレフィン樹脂,アクリル系樹脂などのポリマーから製造されているが,その複屈折をゼロに近づけるために,多くの添加剤が混ぜられている。

研究グループは今回,多糖類の一種であるプルランから,添加剤を全く必要としない「ゼロ複屈折ポリマー」の開発に成功した。プルランは,微生物によって生合成される水溶性多糖類の1つで,グルコースが2つのα-1,4結合と1つのα-1,6結合を規則正しく繰り返すことにより長くつながった,階段状の非常に珍しい分子構造を持っている。

プルランは主に,食品添加剤,可食性フィルムや医療用カプセルなどとして利用されているが,これまでプラスチックの原料として用いられることはなかった。今回,研究グループはプルランの特徴的な分子構造に着目し,分子構造中に存在する3つの水酸基(-OH)をエステル基に置換してプルランアセテートに変えることにより,特徴的な分子構造を残したままで,ゼロ複屈折を発現させることに成功した。

開発したゼロ複屈折ポリマーは,ゼロ複屈折の発現に,添加剤を一切必要としない。これは,プルランの持つ特徴的な階段状の分子構造のため,分子配向が抑制されたためであると考えられるという。また,熱延伸を施しても,分子配向の緩和が容易に起こることから,ゼロ複屈折の延伸フィルムも得られることがわかった。

さらに,このゼロ複屈折ポリマーは,全ての可視光領域(波長=380~750nm)において,ゼロ複屈折を示すことも発見した。機械物性,耐熱性,耐水性,成形加工性にも優れていることから偏光板保護フィルムや位相差フィルムとして,さまざまな分野での利用が期待されるという。

今後は,溶融押出成形などの工業手法により,ゼロ複屈折フィルムの作製を行なうと共に,自然界にあるさまざまな特徴的な分子構造を持つ多糖類の構造を保持したまま,新規な高機能・高性能ポリマーの開発を行ない,石油由来の原料を使用しない,バイオベースのプラスチック創出技術を確立することで,二酸化炭素の排出削減につなげたいとしている。

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