富士フイルム,高精細X線動画技術を開発

富士フイルムは,ノイズを抑えた高鮮鋭なX線動画をリアルタイムで表示することができる医療用X線動画技術を開発した(ニュースリリース)。

X線動画は,手術中にX線を継続的に照射して,体内の様子を観察することができる方法。整形外科や脳神経外科領域などの手術では,患者の身体的負担を軽減するため,血管内のカテーテル治療など低侵襲な手技が広く用いられている。これらの手術では,X線動画を用いて術中に患部の位置や状態を把握するため,X線動画は高鮮鋭であることが求められている。

一般的に,X線動画のノイズを除去するには,動画を構成する連続的な静止画(フレーム)を単純に重ね合わせて,その平均値を元に画像処理を行なう方法が用いられている。しかし,この方法は,フレーム間で観察部位が動くと,観察部位が残像のように複数に見えたり,観察部位の鮮鋭性が低下するなどの課題があった。

今回同社が開発した医療用X線動画技術は,前後のフレームに写っている観察部位を比較して,観察部位が動いた領域を高精度に検出する。動いた領域の位置を重ね合わせてから加算平均を行ない,鮮鋭性の低下を抑制する。具体的には,以下の3つの技術を搭載している。①X線画像にランダムに生じるノイズを高精度に抽出する画像解析技術,②観察部位の動きを正確に検知する画像解析技術,③X線エネルギーの検出効率を向上させる画像読取技術。

また,ノイズが増加しやすい低線量の撮影であっても,フレーム毎のノイズを高精度に抽出する画像解析技術が,ノイズの大幅な軽減に寄与する。この一連の画像処理は,新開発の画像処理エンジンによって高速で行なわれるため,高鮮鋭なX線動画をリアルタイムで得ることができる。同社は今後,外科用イメージへの搭載など,この技術の早期実用化を目指すとしている。

その他関連ニュース

  • 弘前大ら,無色透明でX線を遮蔽できる複合材を開発 2024年12月10日
  • 名大,AIで究極のX線レンズを作製する方法を開発 2024年12月02日
  • 理研ら,自由に像を成形するX線プロジェクター実現 2024年11月21日
  • FBRIら,X線照射を造血幹細胞の再生医療に応用 2024年06月11日
  • 東大ら,高精細・高感度なX線イメージセンサを作製 2024年05月13日
  • 【解説】究極のX線観察を実現,原子レベルで形状可変なミラーとは 2024年05月09日
  • 原研ら,放射光と中性子線で漆のナノ構造を解明 2024年03月05日
  • 理研ら,微小結晶試料の構造をXFELで高精度に解明 2024年02月29日