JAXAら,衛星向けアウトガスセンサーを開発


日本電波工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は共同で,真空環境下において宇宙用材料等から放出されるガス(アウトガス)を計測するための新システムTwin QCMを世界で初めて開発した(ニュースリリース)。

今回開発したシステムは,従来品に比べてその精度,安定度に優れた新しい方式のセンサーで,今後,JAXAや国内のみならず世界の宇宙機開発におけるコンタミネーション対策に大きく貢献できるものだという。

宇宙空間においてはプラスチックや接着剤等の材料から放出されるアウトガスによるコンタミネーション(汚染)が問題となっている。地球観測衛星や天文観測衛星の望遠鏡レンズ表面等でコンタミネーションが生じると,光学性能や画質を低下させ,寿命が短くなる。このため,材料からのアウトガスの発生を可能な限り抑えられるよう,正確な計測結果に基づく部材選定が重要になる。

アウトガス計測の分野では,従来から,水晶振動子センサーによるQTGA計測法が用いられている。参照用センサーと計測用センサーの差分を計測することでアウトガスの付着量を計測し,センサー温度を制御することで,物質の付着・脱離特性から何のガスかを同定している。

しかし,2つの水晶振動子センサー間の特性差や温度差が,高精度な計測を妨げる要因となっていた。この課題を解決するため,JAXAと日本電波工業は共同で,独自のツインセンサー技術に基づく新型のコンタミネーション計測センサーの研究開発に取り組み,開発に成功した。

開発したTwin QCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶振動子式微小天秤)センサーは,1枚の水晶振動子センサー上に参照用電極と計測用電極を設けたツインセンサー方式のため,従来品の課題であったセンサー間の特性差や温度差のバラつきの問題が解消されるという。

このツインセンサー技術は,日本電波工業が販売中のバイオセンサーで培った技術を用いている。またJAXAは,日本電波工業とともにアウトガス計測における従来の技術的課題解決に取り組み,開発品の評価実験などを担当した。

日本電波工業では,今後,国内外の宇宙開発機関・関連産業向けの販売を行なうとともに,JAXAとの共同開発品であることを示す“JAXA COSMODE”付与製品として,コンタミネーション抑制のためアウトガス計測を必要とする半導体や建材メーカー市場等一般産業分野への展開も予定している。

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