広島大ら,Spring-8で古代金属製品の内部を可視化


岡山市立オリエント美術館,広島大学,高輝度光科学研究センターの研究グループは,SPring-8の高エネルギーX線を用いた高分解能CT画像撮影を行ない,青銅と鉄を組み合わせたバイメタル剣の柄の鮮明な内部画像を得ることに,世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

この実験はSPring-8の200keVという高エネルギーのX線を用いて,分解能0.015mmで三次元CT撮影を行ない,柄の断面画像や立体構造を得た。これまで既に,オリエント美術館や広島大学所蔵品などを含め,30本以上のバイメタル剣の撮影を行なっている。

イラン北部由来と考えられる,バイメタル剣(前10世紀頃)の透過画像と断面画像から,鉄剣に青銅の柄をつけるにあたって,鉄剣の茎なかごを手がかりとして型に入れ,熱して熔かした青銅を流し込む“鋳ぐるみ”技術が使われていることが判明した。

これは初期には難しい技術であったらしく,長い柄を作るために,何度も熔けた青銅を流し込んだ痕跡が見つかった。また,柄の先にはさまざまな装飾(柄頭飾り)が付けられたが,複数回の鋳ぐるみや,別作りの青銅製柄頭を鋳ぐるむなどして製作していたことがわかった。

以上のように,前2千年紀末に新たに普及しはじめた鉄製武器は,在地の青銅器製作技術の中に取り込まれながら,数世紀かけて普及していった様子を反映しているという。

これまで,古代の金属製品に関する研究は形型式学的研究が中心で,製作技法を含めた,金属製品内部に関する情報を得るためには,切断を含む破壊分析を伴う必要があり,貴重な文化財への応用は躊躇された。X線撮影は有効だが、直径30ミリ以上もある銅柄内部を高分解能で鮮明に観察するには,X線の強度が弱すぎた。

今回,SPring-8の高エネルギー放射光を用いることで,非破壊かつ高分解能で内部構造を調べられることを世界に提示しただけでなく,古代の金属器製作技術の一端を明らかにすることができた。このように,考古遺物の専門家と放射光分析の専門家が共同して文理融合型の研究を進めることで,両者の学際において最大の成果が得られるとしている。

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