産総研ら,LED向け高性能蓄光材を開発

産業技術総合研究所(産総研)は立山科学工業と共同で,LED照明に対応した高輝度・長残光時間の蓄光材料を開発した(ニュースリリース)。

超高層ビルでは,停電時も発光し続ける蓄光材料が安全誘導部材として活用されている。しかし,室内照明は蛍光灯からLED照明への置き換えが進んでおり,紫外光を含まないLED照明では,残光輝度や残光時間が低下する問題が生じてきている。

今回の研究開発では,化学溶液法を用いた精密な組成制御技術により,蓄光材料へ異種金属ドーピングを行なう新規蓄光材料開発とその新たな合成プロセスを考案し,高輝度,長残光な蓄光材料を開発した。

開発した材料に、LEDの光(波長:460 nm)をあてると,材料中の電子が励起されることで発光し,励起停止後も発光し続ける。励起停止後10分後の輝度は602mcd/m2と市販蓄光材料の約3倍であった。また,市販蓄光材料では,LEDによる励起停止後,2時間で10mcd/m2に減衰したが,開発した蓄光材料は4時間後まで10mcd/m2の輝度を維持した。

蓄光材料の発光は,発光の中心である賦活材料の濃度を高くし過ぎると逆に濃度消光が起こったり残光時間が短くなったりするが,今回,母材料のバンドギャップ,賦活材料の濃度,トラップ準位の濃度をイオン半径の異なった異種金属のドーピングによって制御し,かつ新しい合成プロセスを考案することで,高い結晶性と賦活材料の最適な酸化状態を実現したことにより,残光の長時間化と輝度の向上を両立できた。

今回開発した蓄光材料を安全誘導標識などに用いれば,超高層ビルやタワーマンションなどの災害時に,長時間にわたる安全な避難誘導が実現するほか,省エネ照明,住宅建材,鉄道,モバイル機器などにコーティングして災害時避難システムの構築が可能となる。

さらに,産総研で開発した赤色蓄光材料などとの混合による蓄光の多色化技術は,パスポートなどの公文書偽造防止システムなど,さまざまな分野へ適用でき,安全,安心な社会への貢献が期待されるとしている。

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