科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業において,慶應義塾大学の研究グループは,高速で高精度なテラヘルツ偏光計測装置を用いた新しい黒色ゴム材料の非破壊検査手法の開発に成功した(ニュースリリース)。
カーボンブラックが配合された黒色ゴム材料は,タイヤや防振ゴムなどに利用されており,その内部状態を検査する技術の確立が必要だが,黒色ゴムは,人間の目が感じる可視光や近赤外線,中赤外線も透過しないため,光を用いてその内部状態を非破壊で観察することは極めて困難とされてきた。
今回,幅広い光スペクトルの中で,電波と光の境界にあるテラヘルツ光だけが黒色ゴム材料に対して透過性をもつことに着目し,添加されたカーボンブラック凝集体の並び方を偏光測定によって推測できることを実証した。
さらに,カーボンブラック凝集体の整列の様子から,材料が「どちらの方向に」,「どの程度」ひずんでいるかを推測することにも成功した。
研究で開発した装置は,小型テーブルに乗る程度に小さく,さらにテーブルタップ電源で動作する。一点の計測時間が最速25ミリ秒と高速。
今後,実用化と普及をめざし,①計測装置の堅牢化を進め,工場などで実地検査できるような装置開発,②高速イメージング用途に応用するため,10㎝/sの速度で非破壊検査できるようなセンサーの機械動作機構を構築する。
この分析手法は,外からの力によるゴム材料変形を推測できることを示しており,これまで光では内部調査ができなかったタイヤや防振ゴムの新しい非破壊検査ツールとして期待されるとしている。