新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトにおいて,産業技術総合研究所と静岡大学は,バッテリーで駆動するロボットに搭載可能な小型で軽量の高エネルギーX線非破壊検査装置を開発した(ニュースリリース)。
今回開発したX線非破壊検査装置は,カーボンナノ構造体を用いた高エネルギーX線源と高エネルギーX線に対応した検出器からなり,1ショット0.1秒のX線を照射すると5cm厚,複数ショットで7cm以上の厚さの鉄鋼部材の透過イメージングができる。
また,X線源と検出器で5kg以内という小型軽量で,ポータブルバッテリーで駆動できるため,インフラ構造物などを検査するロボットに搭載すれば効率的な非破壊検査が可能になる。
カーボンナノ構造体を用いたX線源は,従来のX線源で必要であった電子源用ヒーターやフィラメントが無いため,待機電力不要で,X線発生時にしか電力を消費しない。今回,200kV以上の電圧に耐えられる小型のX線管と高電圧駆動回路を新たに開発して,200keV以上の高エネルギーX線を発生できるX線源を実現した。
またX線検出器としては,X線照射で発光する蛍光体と2次元光検出器を用いた光変換型X線検出器と,テルル化カドミウム半導体素子を用いた直接変換型X線検出器の2種類を開発した。今回開発したX線源と2種類のX線検出器は,全て平均消費電力が40W以下であり,プラント配管検査用に開発しているロボット用の14.8Vバッテリーで駆動できる。
開発したX線非破壊検査装置を用いることにより,プラントの配管など,厚みのある金属部材の減肉検査を高精度に実施することが可能になった。また,小型軽量でバッテリー駆動できることから,自動検査ロボットなどに搭載してインフラ構造物の検査現場での効率的な検査ができるようになる。
今後,開発したX線非破壊検査装置を化学プラント配管検査用のバッテリー駆動ロボットに搭載して,配管の減肉計測などの自動検査の実証試験を行なう予定。また,他のインフラ構造物の非破壊検査への応用も検討するとしている。