農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は,紫色光照射で天敵を畑に誘引することにより,農業害虫であるアザミウマを防除する技術を開発した(ニュースリリース)。
アザミウマはナス,トマト,イチゴなど多くの農作物に害を与える大害虫。近年,農薬が効かなくなりつつあり,大きな問題となっている。
農研機構は,シグレイ,筑波大学と共同で,農薬を使う代わりに「光を使って天敵を集める」ことにより,アザミウマを防除する技術を開発した。
アザミウマの天敵である「ナミヒメハナカメムシ」が,ほとんどの虫が好まない紫色の光(波長405nm)に強く誘引されることを明らかにした。過去の知見から,アザミウマは紫色の光に誘引されないことが知られている。
ナスの露地栽培において紫色の光を照射したところ,照射なしの場合に比べ,天敵のナミヒメハナカメムシを含むヒメハナカメムシ類の数が10倍に増加した。一方,害虫のアザミウマ数は半分以下(60%減少)になり,紫色光照射の高い防除効果が確認された。(文献から,被害果率は5~10%未満に抑えられると推定されるとしている)
農研機構では現在,この防除技術について企業と製品化を進めており,約2年後の商品化を目指している。それに先立ち,シグレイでは「光利用型天敵農業サービスパックお試し版」の提供を今年9月より開始する。価格は1万円/1アール×月数。
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