理研,高分子量バイオプラを作る光合成菌を発見

理化学研究所(理研)は,海洋性の光合成細菌が高分子量のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を生産することを発見した(ニュースリリース)。

PHAは微生物が体内に生産するバイオプラスチックの一種であり,生物が貧栄養時に備える炭素やエネルギーの貯蔵物質。生分解性や生体適合性などの特性を持つことから,PHAは石油由来のプラスチックの代替材料として注目を集めている。

これまでの研究により,光合成細菌がPHAを生産することが既に報告されていたが,そのほとんどが淡水性の光合成細菌によるものだった。

研究チームは,海水を培地として利用できること,また高塩濃度での培地により他の細菌の混入を減らすことができるという観点から応用展開が期待される海水性の光合成細菌に注目した。

まず,研究チームは,海洋性の光合成細菌である12株の紅色硫黄細菌と紅色非硫黄細菌のPHA生産能を検証し,全ての種類の光合成細菌がPHAを生産することを発見した。

また,人工海水を培地として用いたPHA生産も可能であることを示した。さらに,生産されたPHAの性質を調べたところ,一部の紅色硫黄細菌,紅色非硫黄細菌が非常に高い分子量のPHAを合成していることが分かった。

PHAの抽出や精製過程において分子量が低下することが報告されていることから,今回のような高分子量のPHAは非常に有用な材料となる。また,高分子量のPHAでは,引張り強度や再延伸性などの物性も向上するという。

今後,二酸化炭素からのPHA生産を最適化することにより,より環境負荷の低いプラスチック生産が期待できるとしている。

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