理研ら,環境変化で半永久的に動作するアクチュエーターを開発

理化学研究所(理研)と東京大学らの研究グループは,環境に存在する湿度の揺らぎをエネルギー源として半永久的に駆動する薄膜アクチュエーターを開発した(ニュースリリース)。

モバイル機器やウェアラブルデバイスの発展が著しい昨今,身の回りにある未利用のエネルギーを集め“その場で”エネルギーに変換する「エナジーハーベスティング技術」の開発が必要とされている。

研究グループは,わずかな湿度変化に応答し半永久的に動き続ける薄膜アクチュエーターを開発した。この薄膜は水分の吸着量に応じて屈伸するため,湿度変化に応じて屈伸運動を示す。

従来,湿度に応答する薄膜は水を吸収しやすい高分子材料が用いられてきたが,研究グループは水をほとんど吸収しない高分子材料を薄膜に用いた。

ただし,この高分子材料は,構造の一部に水を吸着する箇所を持っており,薄膜を形成する際に,この高分子の向きを適切に揃えることで,極少量の水分子の吸収で非常に大きな屈伸運動を行なう薄膜を実現した。

その結果,汎用の湿度計では感知できないほど小さな湿度変化にも応答・屈伸することが可能になった。これは,開発した薄膜が身の回りに存在する,非常に小さな湿度の揺らぎから,運動エネルギーを取り出せることを意味する。

さらに,薄膜の一部に金を蒸着することで,水滴の周りに起こる湿度の揺らぎを駆動力にし,一方向に歩き続けるアクチュエーターの開発にも成功した。

薄膜の水分の吸着量は熱や光にも影響を受けるため,環境におけるさまざまな揺らぎを薄膜の運動エネルギーに変換することが可能。また,この薄膜は環境の変化に高速で応答することが可能なため,薄膜に強い光を照射すると薄膜が高速で屈伸し,ジャンプすることもできる。

この薄膜は,グラフィティック・カーボンナイトライドと呼ばれる2次元状高分子を用いることで実現した。独自に開発した手法により,原料として安価なグアニジン炭酸塩を用い,加熱するだけという非常にシンプルな手法で作製することが可能。

この成果は,今後,エナジーハーベスティング技術,エネルギー変換材料の設計に大きな影響を与えるほか,薄膜の運動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換する技術を実現することで,実際のデバイスでの利用も期待できるとしている。

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