NEDO,次世代レーザー加工技術の研究開発に着手

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,高付加価値製品の製造に適した高精度・高品位加工に対応する次世代レーザー加工技術の研究開発に着手する(ニュースリリース)。

このプロジェクトでは,素材の特性に合わせた高品位で効率的なレーザー加工の実現に向け,光源技術や加工プロセス技術,加工システム技術,シミュレーション技術,センシング・評価技術などを産学官連携で体系的に開発する。

これらの技術を組み合わせることにより,経験に頼った従来のレーザー加工プロセス開発の大幅な簡略化・効率化を可能にする実用的なレーザー加工プラットフォームを構築し,また,日本の強みである先端素材に適した高精度・高品位な加工を提供することで,新産業革命をリードする日本の次世代ものづくりを支える。

「高品位レーザー加工技術の開発」,「高出力レーザーによる加工技術の開発」,「次世代レーザー及び加工の共通基盤技術開発」,これら3つの研究開発項目については,産学連携体制で体系的に開発を実施する。

【1】高品位レーザー加工技術の開発
赤外光から深紫外光への波長変換効率や耐高光入力特性に優れる光学結晶の高品質化・低コスト化技術および赤外域で発振するピコ秒パルスファイバーレーザーの高出力化技術を開発し,これらを一体化することにより,素材の特性に合った高精度かつ高品位なレーザー加工を可能とする,短波長・短パルスレーザーの実用化を目指す。

また,開発した短波長・短パルスレーザーおよび加工モニタリング機能を組み込んだレーザー加工システムを実用化し,研究開発項目【3】と連携して先駆的な高精度・高品位レーザー加工に関する技術開発を体系的に推し進める。

【2】高出力レーザーによる加工技術の開発
高出力励起レーザーモジュール技術,固体光増幅器技術,高効率冷却技術を開発し,100J級の非常に高いパルスエネルギーのレーザーを実現する。その出力を素材へ照射し表面が瞬時にプラズマ化することで生じる衝撃波を,従来の機械加工では生産性や再現性が期待できない表面改質(ピーニング)や成型(フォーミング),表面クリーニングなどへ応用することを目指す。

また,研究開発項目【3】と連携して高パルスエネルギーレーザーによる加工現象を高精度モニタリングする技術を開発し,最適加工条件の実用的な導出手法確立を目指す。

【3】次世代レーザー及び加工の共通基盤技術開発
レーザー加工現象を解明し素材の特性に合った高品位かつ効率的な加工を実現するため,発振パラメータを広範に制御可能なレーザー,加工状態を非破壊非接触でその場観察可能なセンシングシステム,およびこれらを組み込んだレーザー加工システムを研究開発項目【1】【2】と連携して開発し,系統的な加工・評価を通じて得られる結果をデータベース化するレーザー加工プラットフォームを構築する。

また,加工状態を高精度に予測するためのモデリングやシミュレーション,分析評価などの共通基盤技術を開発する。さらに,今後成長が期待されるレーザー加工応用分野や先端機能素材,レーザー加工システムの動向に関する調査研究を行なう。

【委託予定先】東京大学,三菱電機,大阪大学,スペクトロニクス,浜松ホトニクス,ギガフォトン,産業技術総合研究所

また,上記【1】~【3】に加え研究開発項目【4】として,将来のレーザー加工技術に資する新しいレーザー構造創出や波長域開拓に向けて,日本が強い半導体レーザーダイオード技術を始めとする光源基盤技術・周辺要素技術の開発を実施し,加工をはじめとする幅広い応用を探る。

【4】次々世代加工に向けた新規光源・要素技術開発

採択テーマ 委託予定先
フォトニック結晶レーザーの短パルス化・短波長化 京都大学
スタンレー電気
高品質AlN結晶基板を用いた最短波長領域高出力深紫外LDの研究開発 理化学研究所
山口大学
高効率加工用GaN系高出力・高ビーム品質半導体レーザーの開発 パナソニック
高出力・高ビーム品質動作を可能とする新型面発光レーザーの研究開発 東京工業大学
富士ゼロックス
高効率・高出力量子ドットレーザーの研究開発 東京大学
三菱電機
革新的小型・高効率UVレーザー光源の開発 金門光波
大阪大学
レーザー技術総合研究所