理研,ガラス湾曲による微粒子分離に成功

理化学研究所(理研)の研究グループは,ガラスの湾曲を利用して2枚のガラス板の間に広がる流路の高さを調整することで,微粒子をサイズごとに高精度に分離する装置を開発した(ニュースリリース)。

微粒子は,nmから数百μmサイズの微小な粒子。印刷用トナーなどの工業製品をはじめ,製薬やバイオテクノロジーの分野,さらに小麦粉や抹茶など食品の分野でも幅広く利用されている。

微粒子の特徴を表すのは,粒子の大きさ「粒子径」。例えば,舌触りが滑らかな食品は,均一で小さな粒子径の粒子で作られている。薬に使われるマイクロカプセルは,その粒子径によって体への吸収率が左右される。

このように,粒子径は粒子の性質に直結する。従来,粒子径は動的光散乱法や電気的検知法などで測定されていたが,比較的均一な大きさ・組成・形状の試料にしか適用できないという問題があった。

研究グループは,ガラス基板と薄板ガラスを貼り合わせて高さがnmからμmの小さな隙間を作り,薄板ガラスを湾曲させることで,その隙間の高さを調整し,微粒子をサイズごとに高精度に分離する装置を開発した。

具体的にはまず,ガラス基板に流路(溝)を形成し,その上に厚さ90μmの薄板ガラスを設置した。このとき,流路出口の高さは36nmだった。

次に,ガラス基板と薄板ガラスの間に微粒子を送り込むガラス細管を挟み込んだ。そして,薄板ガラスの上に重りを載せ薄板ガラスを下向きに湾曲するようにしたところ,出口から装置内に向かって,流路の高さが緩やかになり,この高さの変化を利用することにより粒子径ごとに微粒子を分離できることが示された。

この装置の機能を検証するため,粒子径が均一な0.5,1.0,2.0μmのポリスチレン粒子を分散させた液体を使って粒子径ごとに微粒子を分離できるか実験した。顕微鏡で観察したところ,粒子径が同じ粒子は同じ高さの流路位置で移動を停止し,粒子径に応じて一列に並ぶ様子を観察できた。

この研究は,nm~μmレベルのガラス微細加工に応用でき,軟らかい粒子の測定にも使えるため,細胞小器官や細胞からの分泌物などの微小構造体の分離や解析への応用が期待できるとしている。

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