東大ら,原始星を取り巻く大型有機分子の回転リングを発見

東京大学,理化学研究所を中心とする日仏の共同チームは,アルマ望遠鏡の観測データを解析し,太陽程度の質量をもつ若い原始星IRAS 16293-2422 Aの周りに,半径50天文単位の大型有機分子の回転リングを発見した(ニュースリリース)。

星間空間で形成された有機物がどのように太陽系にもたらされたかは,太陽系および地球環境の起源を理解する上で一つの謎となっている。これまで炭素鎖分子のような特殊な有機分子が惑星系形成領域の手前まで存在していることがいくつかの原始星で示されていたが,より一般的な大型有機分子の分布については不明であった。

今回発見された回転リングは,原始星に向かって落下してきた星間ガスと,形成されつつある惑星系円盤の境界面にあたる。星間空間で形成され星間塵に蓄えられた大型有機分子が,蒸発してきたものとみられるという。

この結果は,星間空間起源の大型有機分子が惑星系に供給されていることを示す直接的な証拠となるもの。同時に,惑星系にもたらされる有機分子が原始星によって異なることがわかった。このことは,宇宙における太陽系の普遍性・特殊性の議論に化学組成という新しい視点が必要であることを示している。

この研究の結果は,従来不明であった原始星円盤の形成とそこでの物質進化の理解を大きく進めるもの。また,原始星円盤では,将来,惑星系が形成されるので,化学組成の特徴は惑星系へと受け継がれていくことが考えられるという。

このことは,太陽系の物質的起源を理解する上で,新しい視点を提供するものであり,太陽系が宇宙の中で普遍的なものであるか,特殊な存在であるのかを判断する重要な鍵となると期待される。

研究チームは,アルマ望遠鏡を用いた原始星の観測を精力的に展開しており,より多くの天体についてガスの物理的構造と化学組成の進化を調べることで,形成初期におけるガス円盤の多様性と普遍性を明らかにすることが期待されるとしている。

関連記事「アルマ望遠鏡,原始惑星系に複雑な有機分子を発見」「国立天文台ら,巨大ブラックホールの周囲に有機分子が集中して存在することを発見」「東大ら,赤外線分光により星間空間に大きな有機分子の吸収線を多数発見