LIGO科学グループと Virgoグループは,史上2例目となる重力波観測に成功したと発表した(ニュースリリース)。
改良型LIGO検出器が2度目の重力波を捉えたのは,2015年12月26日午後12時38分(日本時)。今回の重力波源も,初回と同じくブラックホールの合体だった。同年9月に捉えられた重力波信号と比べ,強度は弱かったのが長く続いた。
弱かったにもかかわらず検出システムが信号を抽出できたのは,継続時間が長く,波が特徴的な形状をしていたため。
信号の継続時間と周波数から,今回のブラックホールは9月のものよりも軽かったことが分かった。前回は太陽質量の36倍と29倍のものの合体だったが,今回は太陽質量の14倍と8倍のものだった。
衝突時には太陽の質量と等価な量のエネルギーが放出され,観測可能な宇宙全体の光を合わせたよりも明るく輝いた。最終的に残されたブラックホールは,太陽質量の21倍の質量を持ち,コマのように自転している。
信号の強度から、今回の合体は、地球から13億光年の距離で起きたことが分かった。この距離と検出器の感度から,ブラックホールの衝突合体が宇宙で起きる頻度を推定できる。観測数が増えると,宇宙でのブラックホール分布図を描くことができる。
それにより,天体の起源のみならず,宇宙の進化を研究する新しい道具となる。ダークエネルギーやダークマターのような,宇宙の主要構成物であるにもかかわらず未検出のものについて,何らかの情報が得られる可能性があるとしている。
世界で稼働中の重力波検出器は現在LIGOの2つだけなので,現象が空のどの方向で起きているのかほとんどわからない。ヨーロッパの改良型Virgoと日本のKAGRA(かぐら)が観測を開始すれば,角度にして数度の精度で方向がわかるようになる。
さらに,検出器が増えて感度が上がれば,単独もしくは連星中性子星,ブラックホールと中性子星から成る連星系の観測も有望となる。この場合は合体時に中性子星が破壊されることから,中性子星の内部構造に関して貴重な情報が得られる可能性がある。
そして,このような現象は必ず電磁波を出すので,重力波以外を観測する望遠鏡でも観測できる。天球上での位置を精度良く決定することが,真に多面的な天文学の黎明に不可欠となる。
研究グループは,今回の2回目の観測により,まさに重力波天文学の時代に到達したとしている。
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