東洋精機製作所と島根大学は,科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)による研究開発成果を元に,ディジタルホログラフィを応用し,塗料の乾燥硬化過程を非接触かつ定量的に評価する装置「商品名:キュアテスタ」の開発と製品化に成功した(ニュースリリース)。
塗料やインクなどの開発にあたって,塗膜表面の変化や乾燥硬化までの時間などを含め,乾燥硬化過程に関する情報を取得することは重要な開発要素となる。しかしながら,塗料の乾燥硬化や乾燥分布を定量的に評価,可視化する方法は従来なく,日本工業標準調査会(JIS)の規格でも,塗料の乾燥状態は,触って判定する指標(指触乾燥,硬化乾燥)での評価となっている。
島根大学は,ディジタルホログラフィに関わる技術の応用分野として,塗料乾燥硬化の評価に着目した。平成25年度には,東洋精機製作所と共同研究契約を締結し,塗装乾燥硬化評価装置としての製品化を目指した研究開発を進めてきた。
開発した製品は,ディジタルホログラフィを応用し,塗料の乾燥硬化過程を非接触かつ定量的に評価し,乾燥分布を可視化する装置。レーザーダイオード(LD)から照射されたレーザー光は,ビームスプリッタ(BS)によって光路が分けられ,記録する物体(サンプル)に照射された反射光と,偏光子(P)とPZT鏡を介した参照光がつくられる。これらを干渉させて出来る干渉縞(ホログラム)をCCDで記録し,記録したホログラムを数値計算(回折積分)すると物体像が3次元で再生できる。
製品では,2.0秒間の塗膜変化を位相変化量として捉えて画像化し,各時点での乾燥状態を調べることができる。再生像の位相分布との差である位相差画像の位相変化から計算した標準偏差の値の変化より,値が収束する,すなわち表面の変位・変形が収まる時間が分かる。この結果から,塗膜が半硬化乾燥に至っていることが評価できる。
この製品によって,塗料やインクなどの開発だけでなく,塗装や乾燥を必要とする製造ラインにさらなるイノベーションを起こす可能性があるとしている。秒単位で乾燥状態の管理が可能になることによる製造ラインの効率化,また,達成すべき塗装状態から逆算した必要な塗料の量や,乾燥時間の設定も可能になる。
さらには,光硬化型の接着剤の硬化過程評価や,インクドットなどの乾燥・硬化解析からプリンタブルエレクトロニクスへの応用も期待されるとしている。発売は平成28年6月15日,価格は6,500,000円(税別)。