玉川大学は,世界で初めて,ランダム化機構を組み込んだギガビットイーサネット(GbE)対応の量子エニグマ暗号トランシーバー「TU Cipher-0」を開発した(ニュースリリース)。
クラウド・システムの安全保障においてはデーターセンターの情報をバックアップするための通信回線(物理層)の保護は必須である。そのような機能開発として,2000年,米DARPA(国防高等研究計画局)は物理層の暗号,いわゆる物理暗号の開発を開始した。
物理層を保護する物理暗号は光信号を正確にコピーさせないことによって安全性を担保するので,全ての通信情報を隠すことになる。その波及効果として,改ざんを阻止する事ができる。
同大では,DARPAプロジェクト開発の物理暗号を改良し,大容量通信と安全性を両立する量子エニグマ暗号の理論・実験研究を推進してきた。これまでは原理実証実験を主に進めてきたが,実利用している通信回線に導入できるトランシーバの開発が求められていた。
今回,安全性を強化するランダム化機構を組み込んだ,GbEに対応する量子エニグマ暗号の送信機と受信機をワンボックスに収めた量子エニグマ暗号トランシーバー「TU Cipher-0」を作製した。
このトランシーバは全二重通信可能で,GbE信号と物理暗号信号を相互に変換する。19インチラック設置可能の幅で,高さは最小規格の1U(約44mm)。
同学キャンパス内に敷設してある通信試験用の光ファイバー通信回線に導入し,1ヶ月以上にわたりネット接続し,試験運用に成功している。GbE通信回線の両端にこのトランシーバーを導入すると,暗号通信によって回線を保護できるとしている。
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