豊橋技術科学大学は,山梨大学,岐阜高専,東海カーボンと共同で,初めてカーボンナノコイル(CNC)の電気抵抗率とコイル形状との関係を明らかにした(ニュースリリース)。
カーボンナノコイル(CNC)はらせん構造をもつ低次元カーボンナノ材料。典型的なCNCは,ファイバー直径が100から400㎚,コイル直径が400から1000㎚であり,全長は数十㎛。CNCのらせん構造は様々な応用-電磁波吸収体やエネルギーデバイスの材料-が期待される。
こうした応用のために,CNCの機械的・電気的特性を明らかにすることは重要となる。いくつかの先駆的な研究例はあるものの,CNCの形状とその電気抵抗率との関係は未解明のままだった。
今回研究グループは,CNCの電気抵抗率がコイル直径によって増大することを見出した。これは集束イオンビーム装置を使用してCNC抵抗率の精密な測定系を開発したことによるもの。
この測定系は,所望のコイル形状をもつCNCを測定用試料として選択し,測定用電極とそのCNCとを強固に接触させることができる。測定された CNCの電気抵抗率データはバリアブルレンジホッピング(VRH)理論に基づく曲線とよい一致を示した。
さらに15本の単一CNCと3本の黒鉛化処理CNC(G-CNC)とを測定し,CNCの電気抵抗率がそのコイル径によって増加することを見出した。一方,G-CNCの電気抵抗率はコイル径によらずほぼ一定だった。
最大のコイル径をもつCNCの電気抵抗率はG-CNCの電気抵抗率よりおよそ2桁高かった。CNCとG-CNCとの間の電気抵抗率の大きな差はCNC内部の構造に起因することが考えられたという。
この研究成果は新たな抵抗率測定系を開発することによって初めて成し遂げられた。今回の発見は,CNCを用いたナノデバイス―電磁波吸収体,ナノソレノイド,超高感度コイルばね―への道を開くものだとしている。
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