神戸大学の研究グループは,光を当てると固体に変化し,加熱すると液体に戻る金属錯体物質を世界で初めて開発した(ニュースリリース)。今後,再利用可能なプリント基板材料などへの応用が期待されるという。
配位高分子は,さまざまな機能を持たせる事のできる機能性固体として知られている。近年盛んに研究が行なわれ,多くの合成方法が開発されているが,そのほとんどが溶液中の化学反応によるもので,液体に光を照射して配位高分子を生成する方法は,これまで例がなかった。
物質の性質を光や熱などの外部刺激によって制御する技術は,エレクトロニクス材料分野において非常に重要となる。例えば,プリント基板などの作成に用いられる技術では,光を照射することで固まる性質をもつ材料(感光性樹脂)が用いられているが,一度使用すると再利用が困難という課題があった。
研究グループは,金属イオンと有機分子の結合を光や熱で可逆的に制御できれば,外部刺激によって性質が大きく変化する材料が実現すると考え,シアノ基を導入したルテニウム錯体からなるイオン液体を世界で初めて開発した。
この液体は,無色透明で揮発性がなく,マイナス50度でも凍らずに液体として存在する。紫外光を数時間照射すると配位高分子固体に変化し,130度で1分間加熱すると再び元のイオン液体に戻るという特徴がある。
今回,光と熱によって,イオン液体と配位高分子固体という全く異なる結合状態と化学的性質を持つ物質間での可逆的な相互転換を実現し,再利用が可能な光硬化性液体の開発に成功した。プリント基板や光造形,接着剤用途などへの応用が期待される。
研究グループでは今後,らに分子設計をすすめ,生成した配位高分子にガス吸脱着能などの機能性を持たせる研究に取り組みたいとしている。
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