北大,多様な発光色の刺激応答性センサー材料を開発

北海道大学は,様々な発光色を示す刺激応答性センサー材料の開発に成功した(ニュースリリース)。

「メカノクロミズム」と呼ばれる現象を示す分子は,こする,すりつぶすなど機械的刺激を与えると,分子の発光色が変化する。一般に発光はカメラや光検出器によって高感度検出が可能なため,ミクロな分子の発光も検出が可能。そのため,数nm程度のごく微小領域に力が加わったか否かを検出できるセンサーとして応用に期待が持たれている。

一方で,メカノクロミック分子の開発において発光の色をチューニングする一般的な方法は現状ではない。メカノクロミック分子の発光の色は,分子構造と分子配列に起因している。有機分子を合成する方法論はいくつも知られているため狙った分子の合成は比較的容易だが,特定の分子の分子配列を意図して設計する一般的な方法は無い。そのため,狙った発光色を示すメカノクロミック分子の開発は困難とされていた。

研究では,48種の金錯体(金原子を有する有機化合物)を効率よく合成し,このうち28種の金錯体に関してメカノクロミズム特性を示すことを見出した。得られたメカノクロミック分子の発光色は,機械的刺激を印加する前後で青,緑,黄,橙と多種多様だった。

発光が変化するメカニズムを解明する目的で,ほぼすべての分子の結晶構造を極めて詳細に明らかにした。多様な分子配列の形成が確かめられ,このことが多種多様な発光特性が得られた要因であると考えられるとしている。

研究により,発光の色が異なる複数のメカノクロミック分子を,ある材料の様々な部位に塗布し力をセンシングする,といった応用が可能になるという。この材料の発光を検出しメカノクロミズムの有無とその際の発光色を確認することで,これまでは材料全体に力が加わったことしかセンシングすることができなかったが,より詳細に「材料のどの部位」に力が加わったのかを明らかにすることができる。

将来は生体適合性を高めることにより,細胞などに複数のメカノクロミック分子を塗布し発光を観察することで,細胞のどの部位に力が加わっているのかを目で見て検知することが可能となるという。従来では細胞のある一部分に働く力のセンシングは困難とされていたが,この研究により細胞の運動の詳細なメカニズムの解明に繋がり,生命現象の解明や病気の原因究明に役立つことが期待されるとしている。

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