京都府立医科大学,京都大学CiRAらのグループは,OVOL2が角膜上皮を機能的に維持していることを発見した(ニュースリリース)。
我々人類は外界からの情報の80%を目から得ており,視覚機能の維持は必須の課題となっている。視覚を維持するには光の取り込み口にある角膜が透明であることが必要不可欠であり,角膜が混濁すると視力低下をきたし失明にいたる。
角膜の治療をはじめ,様々な疾患で再生医療の研究が進む中,特定の細胞を適切に誘導する技術が必要となってきている。しかし,角膜上皮細胞の分化がどのように規定されているかはまだわかっていない。
研究グループはiPS干渉法を用いて,OVOL2を含む6つの転写因子セットが,ヒト角膜上皮の性質を決定しているキーとなる因子であることを見出した。このセットをヒト皮膚線維芽細胞に導入することによって,2週間で角膜上皮特異的タンパク質を発現している細胞を誘導することに成功した。
角膜上皮細胞においてOVOL2をノックダウンさせると,角膜上皮の重要な機能の1つである異物の侵入をブロックするバリア機能が大きく低下した。また,その維持メカニズムとして,上皮間葉転換を介していることがわかった。
今回の研究成果により,難治性の角膜疾患に対して,iPS細胞からの分化誘導の高効率化につながることが強く期待されるとしている。