産総研,常に正面に見えるディスプレイを開発

産業技術総合研究所(産総研)は,360度どの方向から見ても画像が正面を向いているように見える表示技術を用いたディスプレイのプロトタイプを開発した(ニュースリリース)。

今回,特殊なレンズによる独自の表示技術を開発(特許出願中)し,どの方向からも表示の正面が利用者を向いているように見えるディスプレイのプロトタイプを製作した。このディスプレイを用いると,これまでの技術で改善できなかった,表示角度による見にくさや死角の問題を解決できる。

通常の表示方法で円形の柱の表面に情報を掲示した場合,情報の表示面に垂直な方向からだけ最も見やすい状態で表示を見ることができるが,方向が変わるにつれて見にくくなり,90度ずれた方向からは表示が見えない。一方,今回開発した技術を適用すると,あたかも柱の内部の平面に見ている方向を正面とした表示面があるように見える。

そのため,柱の周囲のどの方向からも,見ている方向が正面になり,常に最も見やすい条件で表示を見ることができる。また,何人もの利用者が同時に別の方向から見ても,全ての利用者が自分の方向を向いた最適な条件で表示を見ることができる。さらに,この技術の表示装置には動力を利用していないが,利用者やディスプレイが移動しても,あたかも利用者に合わせて表示面の向きが変わるかのように,常に正面向きの表示を見せることができる。

今回開発した技術では,ディスプレイのサイズがほとんど制限されないため,今回試作した手のひらサイズ(高さ約8cm,直径約8mm)の小さなものから,高層ビルの壁面まで,あらゆるサイズに適用できる可能性があるという。

今後は,大都市における情報環境の整備や公共施設での静止画ディスプレイなどを対象に二年以内の実用化を目指すとともに,国や自治体,民間企業と連携して技術移転を進める。また,動画用のディスプレイも,すでに特許出願中の技術で実現できるため,試作を進めており,2020年には公共スペースやイベント,展示会,商業施設などでの業務用としての実用化を目指し,2030年までには民生用として家庭でも楽しめるように実用化を図るとしている。

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