ソニーの社員である柏木俊行氏に対し,平成28年春の褒章において紫綬褒章が授与されることになった(ニュースリリース)。
紫綬褒章は科学技術分野における発明・発見や,学術及びスポーツ・芸術分野における優れた業績等に対して表彰されるもので,今回の受章はブルーレイディスクの基本構造と製法の開発に関する業績が評価されたもの。
なお,この開発では平成23年度の全国発明表彰(主催:公益社団法人発明協会)において最高位の「恩賜発明賞」を受賞しており,その後の発明協会の推薦により,平成27年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)も授与されている。また,発明協会からは今回の紫綬褒章にも推薦されていた。
今回の受章は,大容量に適したディスク構造と製法の開発によりブルーレイディスクの量産化を実現し,高精細で美しいハイビジョン映像等の記録媒体として同方式のディスクが広く用いられ,また,それによりハイビジョンコンテンツが全世界に広く普及することに貢献した業績が高く評価されたもの。
ブルーレイディスクで必要となる容量は25GBであり,従来の赤色のレーザーを使用するDVDの容量の5GBに比べて約5倍の情報を記録することになるため,光ディスクの大容量化を実現するための新たなディスク構造が必要となった。
今回受章した開発において考案された技術では,CD,DVDとの互換性を保ちながら必要とする容量を実現するため,レーザー光が透過するカバー層の厚さを0.1mmまで薄くした。
薄くすることにより屈折した光でも正確に焦点を結べるようになったため,ディスク表面のわずかなゆがみにも強く,DVDの記録再生レーザーのスポットサイズに比べ,高開口数(NA=0.85)の対物レンズと青紫色のレーザーの組み合わせにより,約5分の1のスポットサイズでの記録再生が可能になった。
また,この構造のディスクの製造に向けて,特別な紫外線硬化樹脂を用い,スピンコート(回転延伸)技術を応用した製法を考案したことによって,ブルーレイディスクの量産化が実現した。