神戸大,植物が枯れるメカニズムを解明

神戸大学の研究グループは,植物の光合成により発生する有害な活性酸素が生成される反応を試験官内で再現し,植物が枯れるメカニズムを明らかにした(ニュースリリース)。今後,温暖化などの環境ストレス下でも生育可能な植物をつくり出すことで,食料確保などにつながることが期待されるという。

多くの植物は,光合成により生育に必要なエネルギー源を生み出している。しかし,光合成に必要な光エネルギーを過剰に吸収すると,植物にとって有害な活性酸素(ROS)が生成される。

通常,植物はこのROSを取り除く酵素を持っているが,水不足やミネラル過多などの環境ストレスにさらされると,光合成が抑制されROSの生成にROS除去機能が追いつかなくなり,植物は枯死してしまう。

ROSが植物細胞内の葉緑体で生成されることはすでに知られていたが,その詳細な生成場所やメカニズムはこれまで不明だった。

研究グループは,植物の葉から葉緑体と葉緑体チラコイドを取り出し,波長の短い光を連続して照射した。その結果,光化学系I複合体のうち、「P700」とよばれる光エネルギーを吸収する分子が機能しなくなることで、「スーパーオキシドラジカル(O2)」「ヒドロキシラジカル(OH・)」「一重項酸素(1O2)」の3種類の活性酸素が生成されることがわかった。

さらに,PSIへの電子の流れを制限すると,活性酸素の生成が抑制されることが確認できた。

植物にとって,温暖化など地球環境は非常に劣悪になりつつある活性酸素の生成メカニズムやその制御メカニズムの一端を解明できたことで,温暖化環境下での食料確保が将来可能になるかもしれないとしている。研究グループは今後,活性酸素の制御メカニズムを分子レベルで解明していくとしている。

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