北陸先端科学技術大学院大学の研究グループは,高速プロトン伝導を可能とする2次元高分子材料の開拓に成功した(ニュースリリース)。
2次元高分子は,規則正しい分子配列を有し,ナノサイズの1次元チャンネル構造を創り出す高分子。構成ユニットの開拓により,一次並びに高次構造をともにデザインしてつくることができる物質として,近年大いに注目されている。特に,周期的な骨格構造および1次元チャンネル構造を活かした機能材料の開発が盛んに行なわれている。
今回,水,酸および塩基にも強い安定な結晶性多孔構造体を構築し,その特異なナノチャンネルを利用したプロトン伝導システムの開発に成功した。具体的には,高い結晶性,高い化学・熱安定性および高い表面積(2105m2/g;細孔径3.3nm)を兼備した2次元高分子をベースに,プロトンキャリアとしてイミダゾールやトリアゾールを用いて,2次元高分子の1次元細孔に内包することによりプロトン伝導システムを構築した。
細孔の中では,高容量で存在するイミダゾールやトリアゾールは,水素ネットワークを形成し。摂氏130度の高温下でも安定作業が可能な高速プロトン伝導を実現した。これらのプロトン伝導体は,従来の多孔材料に比べて,200倍も高いプロトン伝導を示した。
プロトン伝導体は燃料電池のキーテクノロジーであり,水素自動車などの性能を直接左右する主材料として,そのインパクトは大きく,特に,高温下で安定作業が可能な高速イオン伝導体は,燃料電池の効率向上,長寿命化,およびコストダウンにつながり,その開発が世界各国で熾烈な競争が繰り広げられている。
今回の研究成果は,次世代燃料電池に新しいプロトン伝導体を提供するものであり,革新的なエネルギー技術の向上に貢献することが期待されるとしている。
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