広島大学は,中国工程物理研究院衝撃爆轟研究所や西南交通大学高温高圧物理研究所との共同で,地球のコアに存在する軽元素構成成分とその量の特定に成功した(ニュースリリース)。
従来、地球コアは地球の体積のうち16.3%を占め,液体の外核が15.6%,固体の内核が0.7%と推定されている。また,コアにはおよそ8重量%の軽元素が含まれることが地震波観測結果から推定されている。
しかし,その軽元素の種類と量が異なると,コアの密度や音速が変化するとともに融解温度が変化する。従って,軽元素の特定は重要な課題の一つだったが,従来は実験的にコア環境(温度・圧力)を再現することや,液体状態の密度・地震波速度の測定が困難であり,共存する軽元素の成分構成の特定化が困難だった。
研究では,地震波解析から得ることができるコア外核の密度と音速を満足させる軽元素の構成成分と量を実験結果と比較することで特定化できた。この結果は,地球内部の温度の推定,特に外核と内核との境界での温度やマントルとコアとの境界での温度の見積もりに大きく影響するという。
研究グループは,地球コアの高温高圧状態でのFe,Ni,Siの3成分に関する密度と音速を測定し,地球コアを伝播する地震波の解析から得られる密度と地震波速度の値を比較することで鉄を主成分とするコア中に存在する軽元素の種類と量を見積もった。コアに相当する高温高圧状態は通常の方法では実現が困難で,衝撃圧縮法を利用した。
これは衝撃波を利用した高温高圧発生法で,100万秒の1秒程度の時間高温高圧状態が実現し,その間に高速測定する。測定には複数のレーザー干渉速度計を用い,必要なパラメータを高速記録して決定する。
今回の研究では,外核に相当する圧力(135-330 GPa)条件下で鉄,ニッケル,シリコン組成に関して密度と音速の衝撃圧縮下での測定を行ない,その結果,密度と音速の両者をコア条件下で満足するには軽元素としてシリコンが十分に(6wt%)あり少量の硫黄(2wt%)と酸素(1-2.5wt%)も必要であることが明らかになった。
この結果は,地球の内部温度の見積もりにも大きな影響を及ぼし,これまで考えられていたものより低温(500-1,000度程度低温)であることを示唆している。このことはマントル最下部の温度にも影響を及ぼし,今後の地球の形成史研究に大きな影響を与えるとしている。
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