JAXAら,木星のX線オーロラのメカニズムに迫る

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の惑星分光観測衛星「ひさき」は,米国航空宇宙局(NASA)のチャンドラX線望遠鏡,欧州宇宙機関(ESA)のXMMニュートンなどと協力し,木星のオーロラを二週間にわたって長時間観測した(ニュースリリース)。

木星のオーロラは地球のオーロラとは比べものにならないほど激しく大規模な現象で,電波,紫外線,X線等の多くの波長帯において地球のオーロラよりも百倍以上明るく光っている。

その中でX線波長域で観測されるオーロラ(X線オーロラ)は光速に近い速度の酸素や硫黄のイオンが木星大気に衝突して発光すると考えられている。しかし,イオンが光速近くまで加速されるメカニズムは長年全くの謎だった。

これについては主に二つの仮説がある。一つ目は地球のオーロラと同様,太陽風の影響で加速されるというもの,もう一つは,木星の高速自転と木星自身がもつ磁場及び木星の衛星イオから供給されるプラズマによって加速されるというもの。

今回,ひさきは太陽風との関連が強いオーロラを観測し,太陽風変動のタイミングとの関係を見積もった。また,チャンドラX線望遠鏡では,木星直径を100分割できるほどの高解像度で観測を行ない,X線オーロラの空間構造とその時間変化を捉えることに成功した。XMMニュートンの分光観測からは,木星の衛星イオの火山ガスや太陽風に存在しうる酸素原子がX線を放射している事がわかった。

この観測結果を用い,太陽風の変動とX線オーロラの発生場所や場所による違いなどを比較したところ,太陽風の速度と木星オーロラの強度が深く関わり合っていることがわかった。さらに,数値計算の結果,X線オーロラを貫く磁力線は木星磁気圏と太陽風の境界面に繋がっていることがわかった。

このことは,X線オーロラは地球のオーロラと同様に,イオンが太陽風の影響で加速されて発生している可能性が高いことを示唆している。JAXAは今後さらに観測を進め,X線オーロラの全貌に迫っていくとしている。

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