KEK,「SuperKEKB加速器」のビーム周回・蓄積に成功

高エネルギー加速器研究機構(KEK)は,2010年後半より高度化改造を行なってきた電子・陽電子衝突型加速器,「SuperKEKB加速器」の試験運転を2016年2月1日より開始,電子・陽電子それぞれを蓄積して衝突させる二つの円形加速器(リング,周長3km)の調整を進め,2月10日に陽電子リング,続いて2月26日に電子リングにおいて,改造後初めて,継続してビームを周回させること,すなわちビームの蓄積に成功した(ニュースリリース)。

今後は,加速器の調整を続けた後,アップグレードされた「Belle II測定器」(電子と陽電子が衝突して起こる反応から生じる粒子について,その種別や運動量などを測定するための測定装置)および新しい超伝導収束電磁石を衝突点に配置して,電子・陽電子ビームの衝突実験に向けた衝突調整を実施する。

「SuperKEKB加速器」は,世界でまだ実用化されていない「ナノビーム大角度交差衝突方式」を採用し,衝突点におけるビームサイズを前身の「KEKB加速器」の1/20に絞り込むとともに,蓄積ビーム電流を「KEKB加速器」の2倍に高めて,「KEKB加速器」の40倍の衝突性能を実現した。

「SuperKEKB加速器」でのビーム衝突によって生み出されるデータは「KEKB加速器」に比べて数十倍に達する予定で,「Belle II測定器」によって測定される大量のデータを解析することにより,宇宙初期に起こったはずの極めて稀な現象を多数再現し,宇宙の発展過程で消えた反物質の謎に迫り,標準理論を超える新しい物理法則の発見・解明を目指すとしている。

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