東北大学は,青紫色半導体レーザーを用いて高分子フィルム上に微細なカーボン電極構造を直接描画することにより,安価なカーボン材料による平面型スーパーキャパシタとしては,世界最高の静電容量を有するフレキシブルで高性能なマイクロスーパーキャパシタの開発に成功した(ニュースリリース)。
ウェアラブルデバイスやフレキシブルデバイスの電源において平面型のマイクロスーパーキャパシタが注目されている。これは電気二重層キャパシタとも呼ばれ,電池とよく似た特性を持っているが,電池のような金属系の電極を必要とせず構造が簡単で,急速な充放電が可能といった特徴を有している。
通常は,2つの電極の積層構造だが,平面型のマイクロスーパーキャパシタでは,2つの微細な櫛形の電極が1枚のフレキシブルな高分子フィルム上に向かい合って形成された構造をとっており,従来の積層構造のスーパーキャパシタよりも,さらに薄型でフレキシブ ルで,同一平面内に多数の微細なキャパシタを集積化できるといった特徴を有している。
このような平面型のマイクロスーパーキャパシタの作成には,これまでは感光性の材料を用いたフォトリソグラフィー法が用いられてきたが,最近,一段階でカーボン電極構造を形成することができるレーザー直接描画法が注目されており,平面型マイクロスーパーキャパシタの低コスト量産技術が期待されている。
平面型マイクロスーパーキャパシタのレーザー直接描画には,これまで炭酸ガスレーザー等の比較的大掛かりな装置が用いられてきた。
研究グループは,数センチ角の大きさの青紫色半導体レーザー(発振波長405㎚)を用いて開発したレーザー直接描画装置を用い,フレキシブルなポリイミドフィルム上へのマイクロキャパシタ構造の形成条件を最適化することによって,従来の最高値の2倍以上の静電容量(35mF/cm2)を有する平面型マイクロスーパーキャパシタを開発した。
青紫色半導体レーザーを用いることによって性能が向上した理由としては,炭酸ガスレーザーが10㎛付近の赤外線であるのに対し,青紫色半導体レーザーは405㎚とより短波長であり,レーザー光を照射するポリイミドフィルムでの吸収効率が高いことがあげられる。
これによって,特異な多孔質構造で表面積の大きなカーボン層が形成され,スーパーキャパシタの静電容量の向上につながったと考えられるという。
これは,日本の独自技術である小型でエネルギー効率の高い青色発光デバイスが,照明や各種電子デバイスとして私たちの生活を変えたばかりでなく,製造業の分野においても革新をもたらす可能性を示すもの。
コンパクトな青紫色半導体レーザー描画装置は,フレキシブル&プリンテッドエレクトロニクスにおいてはオンディマンドな生産システム を可能とし,また,マルチヘッド型のレーザー描画装置ができれば,それは平面型マイク ロスーパーキャパシタの低コスト量産プロセスの実現につながると考えられるという。
研究グループでは,青紫色レーザーによる平面型マイクロスーパーキャパシタの研究をさらに進めており,より高い特性が得られる可能性が示されているという。