大阪大学,積水化学工業,日油は共同で,共同でフッ素樹脂と金属膜とを接着剤を用いることなく強力に接合する技術の実用化を行なった(ニュースリリース)。
フッ素樹脂は水や油をはじく性質を持つことから撥水コートやフライパンの焦げ付き防止コーティングをはじめとして日用品にも広く使われている。また,電気的な特性にも優れているため,情報通信量の増大に対応する高周波回路用の基板材料としても期待されている。
しかしながらフッ素樹脂は化学的には不活性であるため,他の物質との接合が極めて困難だという問題がある。
そこで,大阪大学は他研究機関と共同で,フッ素樹脂に対して大気圧プラズマを照射するだけで接着剤を用いることなく金属膜やブチルゴムを強力に接合する技術を開発した。
しかし,大学のプラズマ処理設備は反応容器内のガスを置換するバッチ処理方式であり,また,処理できるサイズは3cm角程度のため,実用化レベルの評価を行なうことが困難であり,普及への妨げとなっていた。
そこで今回,この技術の実用化と普及を加速するため,大阪大学と積水化学工業ならびに日油が協力して技術開発を行なった。
フッ素樹脂上への金属配線パターンを「プラズマ処理」と「スクリーン印刷」という簡単な2つの操作で形成する手法を示し,プリンテッドエレクトロニクス技術分野において実現が困難であったフッ素樹脂ベースの高周波回路基板の実用化への道筋が得られた。
開発した技術により,危険な薬液を用いた表面処理や接着剤を使用することなく,フッ素樹脂表面に金属膜,金属配線パターンを高密着に形成することができる。
この技術の適用により,フッ素樹脂を用いた高周波用の高性能回路基板をオンデマンドで低コストに作製することが可能となり,自動車の衝突予防システム用のミリ波レーダーの普及や,今後ますます増大する情報通信量を高速に処理する問題の解決に貢献する。さらに,フッ素樹脂表面の金属化の用途が大きく拡がることが期待されるとしている。
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