ドライバー認識システム市場,ADASの普及と共に拡大

矢野経済研究所では,2015年7月~11月にかけ,自動車メーカーカー,エレクトロニクスメーカー,半導体メーカーを対象に,乗員検知システムの世界市場について調査を実施した(ニュースリリース)。

それによると,2015年における乗員検知システム世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は,前年比10.5%増となる819億4,200万円に達する見込み。現在,同市場の中心となっているのは,米国市場でエアバッグに採用されている,シートに内蔵された体重センサでエアバッグを制御する乗員検知システム。

一方,今後の動向が注目されているのが自動運転関連の乗員検知システム市場。車室内の近赤外線カメラ,ステアリング操舵を検知するセンサー(操舵角センサー)などを使ってドライバーの状態を検知するドライバーモニタリングシステム(Driver Monitoring System:DMS)の普及拡大が期待されており,欧州を中心に市場が立ち上がる状況にある。

2015年における同市場規模(メーカー出荷金額ベース)は237億6,200万円であり,乗員検知システム世界市場全体の29.0%を占める見込みだとしてる。

乗員検知システム世界市場(メーカ出荷金額ベース)は,2014年から2025年までの年平均成長率(CAGR)が12.2%で成長し,2025年には2,628億7,400万円に達すると予測する。

市場を牽引するのが,DMSを中心とした自動運転関連向けシステム。予測では,NHTSA(米国運輸省の国家道路交通安全局)の自動運転システムの自動化分類によるレベル2(部分的自動運転)の搭載台数は,2020年に360万台,2025年に1,989万台に成長するとしている。

さらにレベル3(条件付自動運転)の自動運転システムも2020年以降に市場は立ち上がり,2025年の搭載台数は362万台になると予測している。 このため,自動運転システムの搭載台数拡大により,DMSの採用が進展すると予測している。

すでに欧州の自動車メーカーでは,操舵角センサの操舵情報をもとにドライバーの運転状況を把握し,メーター部に警告表示するシステムを導入している。また,日本の自動車メーカーでも,車室内の近赤外線カメラによるドライバー顔認証を行なう乗員検知システムが高級車,大型のバス/トラックで導入されており,状況に応じて警告音やPCS(プリクラッシュセーフティシステム)を作動させる。

今後は2017~2018年にかけて,日米欧の主要自動車メーカからレベル2以上の自動運転システム搭載車両の投入が相次ぐ事から,車室内近赤外線カメラを採用したDMSの搭載が高級車を中心に進展するとしている。

主な機能としては,高速道路の自動走行時におけるドライバー監視(居眠り検知,視線移動検知),顔認証やジェスチャー入力によるHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)への応用が想定されるという。

すでに一部自動車メーカやTire1メーカでは,車室内近赤外線カメラを利用したDMSの採用を決定しており,2017年から自動運転関連の乗員検知システム市場は拡大基調となると予測する。

2020年以降は, 高速道路での自動運転を行ない,緊急時のみドライバー操作が必要となるレベル3(条件付自動運転)の自動運転システム搭載車両の市場投入も予測され,緊急時に自動運転からドライバー操作に切り替えるためのDMSの需要も立ち上がるとしている。

このため,乗員検知システムのうち,自動運転関連のシステム世界市場(メーカ出荷金額ベース)は2014年から2025年までの年平均成長率(CAGR)が21.7%で成長し,2025年の同市場規模は1,389億8,500万円に拡大すると予測する。