東大,マイクロサイズの液滴挙動の観察に成功

NEDOの委託事業「エネルギー・環境新技術先導プログラム/高品質/高均質薄膜を実現する非真空成膜プロセスの研究開発」において東京大学は,直径が数十から数百マイクロメーターの液滴を高温の固体に滴下すると,飛び跳ね複雑な挙動を示す液滴挙動の観察に成功した(ニュースリリース)。

ナノレベルで制御され高度な機能を持つ高品質/高均質薄膜は半導体デバイスやコーティングの分野に広く用いられている。現在,その成膜は真空プロセスが主流となっている。

委託事業ではエネルギーとコスト削減の観点から,制御性に優れた非真空成膜プロセスの開発を目指し,成膜機構のシミュレーションと化学工学的手法をもとに実用化検討可能な装置開発に取り組んできた。

同大は今回,ミストを用いた化学気相蒸着法(Mist Chemical Vapor Deposition,以下ミストデポジション法)により,薄膜を形成する際のミスト液滴挙動のモデル化と流動解析に取り組んだ。

通常,直径数ミリメーター程度の液滴を高温の固体に滴下すると液滴は固体の温度に応じて核沸騰状態,遷移沸騰状態,膜沸騰状態(ライデンフロスト現象)となることが知られている。

同大は,対象とする直径が数十から数百マイクロメーターの液滴では,どの状態においても,飛び跳ね複雑な挙動を示す液滴の存在を明らかにし,その挙動の観察に成功した。

例えば図の連続写真では,左上より撮影を開始し,液滴が固体表面上を飛び跳ね,高低を繰り返し,徐々に高く跳ね上がるとともに横に移動していることがわかる。この液滴挙動がミストデポジション法における,高均質膜形成の要因となっていると考えられるという。

今回の成果をもとに,同大はこの委託事業の共同研究先である京都大学,高知工科大学,FLOSFIAとともに,さらに微小な液滴挙動のモデル化を進める。

また同時に,得られたモデルからのミストデポジション法に適した装置設計手法の開発を推し進め,これまで成膜が困難であった曲面や凹凸面を有する複雑な形状の立体構造物,例えば配管やバルブなどやディスプレイモニタといった立体構造物やより広範囲への均質成膜への貢献に努めるとしている。

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