北大,多光子イオン化法で水の起源に迫る

北海道大学は,宇宙で水ができる化学反応を実験室内で忠実に再現し,できた水のオルト:パラ比を直接測定することに成功した(ニュースリリース)。

宇宙や彗星で観測される水のオルト:パラ比は,地球の水(オルト:パラ=3:1)よりもパラH2Oが多いことが知られている(オルト:パラ=0.1~2.5:1)。

天文学ではこのオルト:パラ比から, 宇宙の極低温環境下で水が生成したときの温度を知ることができると考えられてきた。しかし,この仮説が正しいかは明らかになっておらず,宇宙の水の異常なオルト:パラ比が本当は何を意味しているのかは,初観測からおよそ30年経つにも関わらず,全くわかっていなかった。

宇宙で水は,星間塵と呼ばれる極低温の小さな塵の表面で酸素と水素が化学反応を起こすことで,まず氷として生成する。その後,生成した氷に星間雲・原始惑星系円盤では強い光が照射されることで,彗星では加熱されることで水が気相へ放出され,オルト:パラ比が観測される。

研究では,宇宙で氷ができ,気相へ放出される過程を実験室内で忠実に再現し,そのオルト:パラ 比を共鳴多光子イオン化法を用いて直接測定した。その結果,-263℃(=10K)で氷を作ったにも関わらず,その氷から放出された水のオルト:パラ比は,10Kに対応するオルト:パラ=0.3:1ではなく,地球と同じ高温状態(オルト:パラ=3:1)になることがわかった。

つまり,水のオルト:パラ比は生成時の温度を示すものではないことが明らかになった。

この研究は,宇宙や太陽系における水の起源の定説を覆し,今までの天体観測の結果を解釈し直す必要があることを意味するもの。今後,この研究の結果を用いて,宇宙でどのようにして水ができ,太陽系の彗星や地球に運ばれてきたのかについて,飛躍的に理解が進むことが期待できるとしている。

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