東工大,アンモニア省エネ合成の手がかりを発見

東京工業大学は,常圧下で優れたアンモニア合成活性を持つ「ルテニウム担持12CaO・7Al2O3(C12A7)エレクトライド」の電子濃度を高め,絶縁体から金属へと変化させると,反応メカニズムが劇的に変化し,従来の10倍以上の高い触媒活性が発現,また活性化エネルギーが半分に低減することを発見した(ニュースリリース)。

これは電子濃度の異なるC12A7エレクトライド触媒を作成し,触媒特性を詳細に調べることにより実現したもの。

アンモニア分子は分解することで多量の水素発生源となり,かつ室温・10気圧で液体になることから,燃料電池などのエネルギー源である水素運搬の物質としても期待されている。

アンモニア合成を効率よく進めるために,鉄やルテニウムなどの触媒に,アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物が添加されていた。

しかし,これらの促進効果は不十分であり,安定な窒素分子の三重結合を効率よく切断することができず,その結果として,どの触媒を用いても窒素分子の結合を切断する過程が全体の反応の速度を遅くしていること(律速)が知られていた。

今回の研究に用いた触媒は研究具グループが2003年に開発したC12A7エレクトライドという物質の表面に,ナノサイズのルテニウムの微粒子を担持させたものであり,電子濃度によって,C12A7は絶縁体から金属へと転移することが知られていた。

今回の成果により,穏和な条件下で作動するアンモニア合成触媒では,電子注入効果と水素吸蔵効果が重要な役割を果たしていることが明確になった。従って,アンモニア合成プロセスの省エネルギー化に向けた触媒開発の有力な手がかりが得られたとしている。

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