理化学研究所(理研)と東京工業大学の共同研究チームは,炭素を含んだ液体鉄炭素合金の縦波速度を70万気圧,2,800ケルビン(K)という超高圧高温下で測定し,地球の液体外核では炭素に極めて乏しいことを発見した(ニュースリリース)。
地球の中心には半径3,500kmの金属核がある。金属核は2層構造となっており,中心部分は固体の内核(固体鉄合金)があり,その外側を液体の外核(液体鉄合金)が囲んでいる。
液体外核は金属核の質量の95%を占め,その主成分は鉄で,その他に水素や炭素,酸素,ケイ素,硫黄といった軽い元素が合計で10wt%(重量%)程度溶け込んでいることが分かっている。
しかし,それぞれの元素がどのくらいの割合で溶け込んでいるかは分かっていない。金属核は最も浅い部分でも地表から2,900kmの深さに位置し,その成分を直接調べることは難かしい。液体外核の成分の手がかりとなるのは,地震波観測から得られる縦波速度,密度といった物理量に限られている。
実際の液体外核の環境を実験室で再現し,液体金属合金の縦波速度を測定して,地震波観測の縦波速度と比較することができれば,その成分を知ることができる。しかし,地球の内部は超高圧高温の世界で,液体外核の最上部で135万気圧以上,4,000K以上になるため,こうした極限条件を実験室で再現し,液体鉄合金の物性を測定することは困難だった。
共同研究チームは,試料を高圧高温状態にして融解させるレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル装置と大型放射光施設「SPring-8」に設置されている,微小な原子の振動を検出できる高分解能非弾性X線散乱分光器を使って液体鉄炭素合金を作成し,縦波速度を70万気圧,2,800Kという超高圧高温下で測定することに成功した。
その結果,液体外核には,炭素が最大で1.2wt%しか存在していないことが明らかになった。これにより,液体外核の10 wt%程度を占める軽い成分の多くは,炭素以外の元素で占められていることが分かった。液体外核に含まれる軽い元素の種類と量を特定できれば,地球磁場を生成していると考えられる核ダイナモのメカニズムや,地球形成時の金属核分離時の状況などの理解が一層進むと期待できるとしている。
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