早大,皮膚にフィットする電子ナノ絆創膏を開発

早稲田大学の研究グループは,伊Italian Institute of Technology (IIT)と共同で,皮膚に貼り付けて生体電気信号を計測可能な極薄電極(電子ナノ絆創膏)を開発したことを発表した(ニュースリリース)。

ウェアラブルデバイスは,柔らかい高分子薄膜上に電子回路を形成することで,シールのように皮膚に直接貼り付けられるデバイスも報告されるなど,デバイス形態は「着る」から「貼る」時代へと進展しつつありる。

しかし,皮膚などの柔らかい生体組織にデバイスを違和感なく貼り付けるためには,電子回路を構成する硬い金属部分(例:配線・電極)をプラスチックのように柔らかくする必要がある。また,作製時間やコストを抑えるためには,従来の微細加工技術に頼らない印刷技術を利用した新たな大量製造方法の確立も重要となる。

これまで研究グループでは皮膚や臓器に対して高い密着性と追従性を有する医療用高分子ナノシート(ナノ絆創膏)を開発してきた。今回の研究では,ロボット工学を専門とするIITとの国際共同研究のもと,ナノ絆創膏の素材に電気を通すプラスチックである導電性高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を利用することで,「電子ナノ絆創膏」を新たに開発した。

電子ナノ絆創膏は,数十~数百nmという超薄性に由来する高い柔軟性と密着性を示し,皮膚に貼り付ければ電極として生体電気信号(例:表面筋電位)を検出することができる。また,ナノ絆創膏の開発研究で培ったロールtoロール法を応用することで,面積にして従来の平方センチメートルから平方メートルサイズまで大量に製造する方法も新たに確立した。

電子ナノ絆創膏は糊や粘着性ゲルなどの接着剤を使わずに皮膚にナノレベルで密着・追従するため,スポーツの際に生じる皮膚の伸縮や発汗条件下でも,破れたり剥がれたりすることなく安定して装着できる。また,電子ナノ絆創膏を電極として利用してヒトの筋肉の活動を計測したところ,医療機関で用いられる金属製電極パッド(粘着ゲル付き電極)とほぼ同等のシグナル-ノイズ比で表面筋電位を検出できることが新たに分かった。

電子ナノ絆創膏は,その超薄性に由来する柔軟性と密着力によって,皮膚表面にやさしくフィットするため,装着時の違和感がほとんどない。さらに,接着剤を使わないので,はがす際の皮膚へのダメージ(角質の剥がれ等)も最小限に抑えられる。したがって,アスリートの運動計測から幼児,高齢者,障がい者のヘルスケアにいたるまで幅広い応用が見込まれるとしている。

さらに,バイオロボティクス分野においては,生体信号を用いる装着型デバイスのデザインを飛躍的に発展させ,将来的には,義足・義手や装着型ロボットへの適用も期待されるとしている。現在では,各種印刷技術と組み合わせることで,より精巧な電子回路を実装した生体計測デバイスの開発も進めている。

また,ウェアラブルデバイス,フレキシブルエレクトロニクス,ヘルスケアデバイス,バイオセンサー,ヒューマンマシンインターフェース/ブレインマシンインターフェース,義肢,装着型ロボットといった分野への適応も期待できるとしている。

関連記事「東大,高精度なウェアラブル体温計を開発」「東大染谷研究室が開発する伸縮性導電インク」「産総研,衣類のようにフレキシブルなトランジスタを開発