北大ら,産学連携で排ガス用触媒をXFEL観察

北海道大学,トヨタ自動車,高輝度光科学研究センター(JASRI),理化学研究所(理研)は,X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を用いた世界初の産学連携研究の成果として,自動車排ガス浄化用触媒材料を,放射線損傷なくナノレベルで観察することに成功した(ニュースリリース)。

理研はJASRIと連携し,SACLAの産業利用振興に必要な調査研究を目的として,平成26年度よりSACLA産学連携プログラムを開始した。北海道大学はトヨタ自動車と共同で「XFEL を用いた自動車用ナノマテリアルの形態や状態の把握」という課題を提出し,平成26年度より2年連続でSACLA産学連携プログラムに採択された。

電子顕微鏡やX線顕微鏡では,電子線やX線といった観察に用いる放射線の照射によって試料が壊れてしまうことがあり,問題となってきた。XFELの発光時間は10フェムト秒以下と,放射線損傷が起こる時間スケールよりも短いため,XFELで試料を照らすと,試料が放射線損傷を受ける前の一瞬の姿を捉えることができる。

研究グループは,このXFELの特徴を活かして,コヒーレント回折イメージングという手法により,自動車排ガス浄化用触媒材料を放射線損傷なくナノレベルで観察することに成功。データ解析の結果,母材であるアルミナの表面に,触媒であるロジウムのナノ粒子が担持されていることが示唆された。

XFELを用いたイメージングでは,研究グループが独自開発した技術により,従来手法では困難であった溶液中でのみ構造を保つことのできるナノ材料の評価も行なうことができる。今後,触媒や電池材料など産業応用上重要な物質の実使用環境やプロセス過程でのナノレベル解析において,この新規技術が威力を発揮すると期待される。

根幹医の成果は,XFELという世界最先端研究施設を産業利用する世界初の試みとなるもの。今後SACLAでの,さらなる産官学連携研究の広がりが期待されるとしている。

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