芝浦工業大学と東京工業大学の共同研究グループは,ハスの葉を金の薄膜で被覆するだけで,表面に照射した光を吸収する大面積光メタマテリアル構造を作製した(ニュースリリース)。
光メタマテリアルは人工的なナノ構造を使った特異な光学的性質を示す物質。負の屈折や物質の不可視化(クローキング),高効率光吸収構造などに利用できる可能性があるため,多くの研究者の注目を集めている。しかし,その多くは微細加工技術を使って作製されてきており,低コストで大面積の光メタマテリアルを作製することは困難だった。
ハスは夏に花を咲かせるが,その葉の表面は強い撥水性(水を弾く性質)を持つ。これは,葉の表面のミクロな凹凸のこぶ構造が撥水性を強めているため。このミクロなこぶ構造に加えて,こぶの表面に多数のマカロニ状のナノ構造が分布している。研究グループでは,これを鋳型として利用すれば光メタマテリアルを作製できると考えた。
ドクダミの葉の表面の電子顕微鏡像で観察したところ,ドクダミはナノ構造を持たず,ハスの葉のナノ構造が光のトラップに重要な役割を果たしていることがわかる。
今回,反射率1%以下の超薄膜光吸収構造を作製することに成功した。この構造は10〜30nmという極めて薄い金属膜で光吸収構造が構築できるため,太陽電池の効率向上や高効率の光熱変換材料として期待できるという。また,自然界のナノ構造を使った様々な大面積光メタマテリアル実現の可能性を示唆する。
製作したメタマテリアルは中心部分が光を吸収するため黒く,固定のためのテープの表面は金色となっている。いずれも金が被覆されていますが,その違いは明らか。金を被覆しても黒くなる性質は,ハスの葉が持つ多数のマカロニ状のナノ構造が光をトラップするためと考えられるという。
比較のため,同じように金で被覆してもドクダミの葉は金色をしていた。ヨモギやサンショウ(山椒)の葉を被覆しても同様に金色だった。
研究グループは自然界のナノ構造を利用して,特異な光学的性質を持つ人工材料の作製に成功した。自然界のナノ構造を利用すれば低コストで大面積のメタマテリアルが作製できる可能性があるため,基礎的な興味だけでなく応用上も意義があるという。今回は高効率な光を吸収する構造を研究した。
自然界にはさまざまなナノ構造が多数存在しており,今後,多様な性質を持つ光メタマテリアルが作製できると期待されるとしている。
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