東大,世界最小ハードフェライト磁石の開発に成功

東京大学の研究グループは,ナノサイズの世界最小ハードフェライト磁石,“イプシロン型-酸化鉄(ε-Fe2O3)ナノ磁性粒子”の開発に成功した(ニュースリリース)。

このハードフェライトは,鉄と酸素からできた単なる酸化鉄。今回,イプシロン型-酸化鉄を5~40nmの間の粒子サイズで系統的に合成する新技術を開発し,ε-Fe2O3が7.5nm以上で磁石の性質(強磁性相転移)を示すことを明らかにした。

磁気テープやハードディスクなどの磁気記録メディアでは,3キロエルステッド(kOe)以上の保磁力が必要だが,今回の材料は,8nmで5kOeの保磁力を示しており,超高密度磁気記録用の素材としての可能性を有している。特に,ビッグデータのアーカイブ用大容量記録メディアとしてグーグルなどでも使用され,磁気テープストレージの未来材料として期待されるという。

また,ε-Fe2O3はフェライト磁石の中で最も色が薄く,透明カラー磁性塗料やプリンター用のカラー磁性トナーなどの新しい用途への可能性も期待される。ε-Fe2O3は,強磁性だけでなく,自発電気分極も持っていることが理論的にも実験的にも明らかになり,最小のマルチフェロイックフェライト粒子ということになる。

鉄と酸素だけからなる酸化鉄は,環境にやさしく低価格であるため大量生産に適した材料であり,今回のナノサイズで強磁性を示すフェライト磁石は,次世代のアーカイブ用大容量磁気テープなどの高密度磁気記録技術などへの利用が期待できるとしている。

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