東北大,テラヘルツによる高速紙幣検査技術を開発

東北大学とローレルバンクマシンの研究グループは,テラヘルツ波の光源を独自に開発し,それを用いて,紙幣等に貼付されたごく薄いテープ(髪の毛の半分から 1/4 程度)を高速に非接触で検出する技術の開発に成功した(ニュースリリース)。

テラヘルツ波はこれまで,発生させる事も検出することも極めて困難だったため,「未踏周波数帯」とか「未使用周波数帯」などと呼ばれてきたが,近年,その重要な応用への期待の高まりとともに,世界中で種々のテラヘルツ光源が開発されてきている。

これほどの高い周波数の電波は,電波であると同時に光の性質も併せ持ち,これまでにない広範な応用分野が期待されている。発生光源や検出デバイスについては,電子デバイスや非線形光学現象に基づく種々の提案がなされ実現されてきた一方で,テラヘルツ波の特徴を活かした応用(キラーアプリケーション)が中々具体的には示されていなかった。

東北大学では,広帯域・高強度連続周波数可変テラヘルツ光源を2002年に実現している。それとは別に,タンネットダイオードデバイスは発振周波数が半導体デバイスとしては極めて高い 700GHz(0.7THz)帯に突入し,0.06THzから0.7THzまでカバーするテラヘルツ小型光源デバイスとして用いる事が出来るようになっている。

研究グループは今回,小型テラヘルツ光源として独自に構成した種々の周波数を発生する半導体電子デバイス等を用い,独自のテラヘルツイメージング装置を設計した。その上で,色々な材質が用いられる紙幣類や樹脂テープ類のテラヘルツ透過特性をデータベース化し,テラヘルツ光の反射特性を把握した上で,最適な撮像条件により,紙幣類に貼付されたごく薄いテープ(髪の毛の半分から 1/4 程度)を明瞭に可視化する事に成功した。

このテラヘルツ光を使った新しい検査法によれば,世界中で日常的に行なわれている紙幣類の点検作業が大幅に効率化できるという。現在の検査法では,接触式の段差計測が主要であるため,検出できるテープ類の厚さや検査速度に限界があり,また紙幣の損傷を招く場合も考えられる。

しかし,今回開発されたテラヘルツ方式の検査法では,非接触で検査が可能であるため,検査の高速化が望めるとともに,損傷を与えることもない。更に,従来の透過検査に用いられるエックス線やガンマー線等の放射線と違い,安全に非接触・非破壊で高効率な紙幣類の検査を実現する事ができる。

研究グループでは実検査装置に必要な高速試験体検査設計を進め,さらに実検査に耐えうる装置構成に仕上げたい考え。更にこの研究成果は,紙幣類検査分野のみならず,同様の各種有価証券などの紙葉類の非破壊検査に広く適用可能であるので,幅広く検査対象を広めていく。そのためには,未だ整備されていない各種無機・有機材料のテラヘルツ分光データベースの整備を進める必要があるとしている。

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