東大ら,ダークマターの季節変化を観測

東京大学をはじめとする研究グループ,XMASS(エックスマス)実験グループは最新結果を発表した(ニュースリリース)。

XMASS実験は,岐阜県飛騨市神岡の地下1000mに設置した液体キセノン検出器を用いてダークマターの探索を行なっている。液体キセノン検出器は,約800kgの液体キセノンの周りを642本の光電子増倍管が取り囲み,さらに全体が2重の真空容器に入れられている。液体キセノンはマイナス100度に保たれており,液体キセノンとダークマターが衝突して放出された光を,周りに配置した光電子増倍管でとらえる。

今回,2013年11月から2015年3月までの1年4ヶ月間のデータを用いて,ダークマターの候補の中でも通常の物質と極めて反応しにくい未知の素粒子WIMP(Weakly Interacting Massive Particle)で且つ「質量の軽い」候補の観測量の季節変化と,ダークマターをWIMPなど特定の候補と絞らない場合の季節変化の両方について解析を行なった。

これまでの研究で,太陽系が属する天の川銀河内での太陽系の運動と太陽の周りを回る地球の公転運動によって,ダークマターの観測量には季節変動が現れると考えられている。

なかでも,イタリアのグランサッソの地下1400mで行われているDAMA/LIBRA実験は,WIMPのうち「質量の軽い」候補の観測量が季節変化していることを示唆している。しかしながら,今回発表されたXMASS実験の最新成果は,DAMA/LIBRA実験の従来結果を否定する結果を示した。

一方,ダークマターをWIMPなど特定の候補と絞らない場合の季節変化については,低いエネルギーの領域では統計的に有意ではないものの,季節変化と思われる効果がみられることが分かった。今後,さらなるデータの収集と解析による研究の進展が期待されるとしている。

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