情報通信総合研究所は,情報通信(ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として公表している。今回,2015年4-6月期がまとまったとして発表した(ニュースリリース)。
それによると,2015年4‐6月期のICT経済は前年同期比4.5%と3四半期連続で増加したものの,季節調整済みの前期比では横ばいにとどまった。前年同期比の動きには,前年同期の消費税増税前の駆け込み需要,Windows XP更新需要の反動減の影響が含まれているため。ICT経済は足踏み状態にある。主因はICT輸出の不振。2期連続の減少となったが,これが財生産の減速をもたらしている。一方,ICT投資が電子計算機を中心に下支え役となっている。
なお,消費の減少幅拡大は,携帯電話キャリアによる新料金の普及などによる移動通信使用料の下落によるもので,実質的な活動を示すサービス活動指数をみると,移動通信は増加を維持している。
前期比でみた需要項目別の動きは以下の通り。ICT設備投資(民需)は3四半期連続で増加。電子計算機は金融業向けが大幅に増加し,情報サービス業,卸・小売業向けの増加が継続した。半導体製造装置はスマートフォンや車載向け部材需要の高まりを受けて増加した。
一方,通信機は通信業や情報サービス業向けが低迷している。ICT消費は2期連続マイナス。これまでICT消費をけん引してきた移動電話使用料の減少が大きい。移動電話使用料の減少は新料金プランの利用者増加の影響と考えられる。
ICT輸出は2四半期連続の減少となった。ICT輸入も2期連続のマイナス。ICT関連の輸出入はともにマイナスが続いており,その動向に注視が必要だとしている。
2015年10-12月期以降ついてはまず情報化投資が堅調に推移することが期待される。好調な企業業績による設備投資マインドの改善やマイナンバー制度などへの対応がけん引する。
ICT消費は携帯電話キャリアの新料金プランの影響や新興のMVNOサービス(格安スマホ)の影響が注目される。格安スマホへの乗り換えによるスマホユーザのARPU減少というマイナスの影響が,一方でゲーム・コンテンツ等新たなモバイル需要の拡大をどこまで進めるかが鍵を握る。
ICT輸出の先行きについては,中国の景気低迷が懸念される。ただし,中国ICT企業でも国外に展開している企業は減速しておらず,影響は軽微であると想定する。ICTサービスは好調な国内の情報化投資需要やマイナンバー対応等制度要因により堅調に推移するとみている。