矢野経済研究所では,国内外のPETフィルム市場の調査を実施した(ニュースリリース)。ここでの工業用PETフィルム市場とは,光学用(光学部材及び副資材用),一般産業用で使われるPETフィルムを対象とし,国内外の主要(日本,韓国,台湾)メーカーの出荷数量ベースで算出している。
◆2015年の工業用PETフィルム市場規模は590,390tの見込,日本メーカーのシェア42.5%,前年比100.8%
2015年の工業用PETフィルム(光学用,一般産業用合計)の市場規模は,日本,韓国,台湾の主要メーカーの出荷数量ベースで,590,390t(前年比97.5%)の見込み。メーカー国別のシェアは,日本メーカー42.5%,韓国メーカー42.5%,台湾メーカー15.0%を見込む。
光学用PETフィルムは市場が立ち上がった2000年代初頭にはほぼ100%が日本メーカーから供給されていたが,2005~2006年頃に韓国メーカー,2009年には台湾メーカーが参入し,その後はコモディティ化,低価格化とともに日本メーカーのシェアは縮小し,2015年には40.3%となる見込み。
◆2015年の工業用PETフィルム市場の構成比は,光学用が46.5%,一般産業用が53.5%の見込
工業用PETフィルム市場はこれまで,光学用(光学部材及び副資材用)の需要に牽引され成長してきたが,LCDバックライトでのフィルム系部材の点数削減や,スマートフォン,タブレット端末の台数伸び悩みなどにより光学用需要そのものが伸び悩む傾向にある。そのため,PETフィルムメーカーの中には従来の光学用中心の展開を見直し,改めて一般産業用での需要取り込みに注力するところも出てきた。
2015年の工業用PETフィルム市場の構成比(メーカー出荷数量ベース)は,光学用(光学部材及び副資材用)が46.5%,一般産業用が53.5%の見込み。
◆地域別では中国・台湾で設備投資が続く一方で,日本,韓国では生産拠点再編の動きも
PETフィルム市場では,2011年より需要は鈍化傾向に転じたが,2011年から2013年にかけて各社の増設ラインが相次いで立ち上がり,PETフィルムの供給過剰が問題となった。2014年以降,PETフィルムメーカーの中には生産設備を整理し,採算性の低い拠点の閉鎖に踏み切るところも出てきた。
主要PETフィルムメーカーの生産能力を見ると,日本国内では2013年に333,400t/年あったのが,2016年には303,400t/年に,韓国国内では2013年に495,000t/年だったが2016年には453,000t/年まで縮小する見通し。日本と韓国の主要メーカーによる,2013年から2016年までの生産能力縮小分は合計72,000t/年に達するものと予測する。
一方で,国内外のPETフィルムメーカーによる中国国内での設備投資が相次いでおり,各社の生産設備の増強及び統廃合の結果,主要(日本,韓国,台湾,中国)メーカーによるPETフィルムの生産能力は2015年末には1,612,400t/年(前年比101.2%)となる見込みとしている。