東京工科大,日焼けによる肌乾燥のメカニズムを解明

東京工科大学の研究チームは,角層細胞に存在するカルボニルタンパクが,紫外線から活性酸素を生成することでさらに増加し,皮膚の乾燥を誘導するメカニズムを明らかにした(ニュースリリース)。

太陽光線の皮膚への慢性的な曝露は,皮膚内の酸化ストレスを亢進することにより老人性色素斑やシワの顕在化といった光老化皮膚の形成を促進することはよく知られているが,近年,露光部位の皮膚の角層および表皮,真皮組織内に,酸化タンパクであるカルボニルタンパクが多く存在することが明らかになっている。

また疫学的な調査では,角層のカルボニルタンパクと皮膚表面の水分量および経表皮水分蒸散量(TEWL)に相関があることや,冬季の乾燥性皮膚においてカルボニルタンパクの増加が報告されている。

このようにカルボニルタンパクと皮膚の乾燥状態との関連が示唆される一方,その誘導メカニズムについての明確な知見はなかった。そこで研究グループは,角層に存在するカルボニルタンパクが皮膚の保湿機能を低下させるという仮説のもと,その検証に取り組んだ。

紫外線照射した剥離角層からの活性酸素生成は,活性酸素反応性の化学発光プローブを用いた手法で確認した。この発光は,スーパーオキシド・ディスムターゼの添加により消失したことから,活性酸素の一種のスーパーオキシドアニオンラジカルである可能性が示された。

さらに,紫外線照射によりカルボニルタンパクも増加したことから,スーパーオキシドアニオンラジカルが角層細胞内タンパクのカルボニル化を促進することも併せて示唆された。

実験では,自家蛍光を有するカルボニルタンパクが,光増感剤として作用してスーパーオキシドアニオンラジカルを生成する可能性を明らかにするため,ケラチンフィルムおよび牛血清アルブミンをアクロレイン処理してカルボニルタンパクを調製し,紫外線照射による活性酸素の生成を化学発光法とESRピンストラップ法にて確認した。

その結果,カルボニル化処理条件に依存した化学発光プローブの化学発光強度の増強と,スーパーオキシドアニオンラジカルに由来するESRスペクトルが確認された。

これらの結果から,角層中のカルボニルタンパクが光増感反応(タイプⅠ)によりスーパーオキシドアニオンラジカルを生成し,さらに角層細胞内タンパクのカルボニル化を行なう“ループ”の存在が確認された。

また,摘出したブタ皮膚を用いた実験では,角層のカルボニル化度に依存した皮膚表面水分量の低下と経表皮水分蒸散量の増加を示し,乾燥性皮膚の状態も再現された。

今回得られた結果は,太陽光線曝露時の皮膚の乾燥メカニズムの一因を明らかにし,抗酸化によるスキンケアの重要性を改めて裏付けるも。今後,スキンケア化粧品や日焼け止め化粧品の開発などへの応用が期待されるとしている。

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