東大,ドロップレット型相分離の新たなメカニズムを発見

東京大学は,二つの液体を混ぜた混合物のドロップレット型の相分離について,長年信じられてきた機構に変わる新しい粗大化の機構を発見した(ニュースリリース)。

これまで30年以上にわたり,流体系のドロップレット型の相分離においては,液滴が熱的なブラウン運動によりランダムに運動し,その結果他の液滴と偶発的に衝突することで粗大化が進行すると信じられてきた。

相分離現象は,様々な系で見られる普遍的な現象で,相分離構造は界面エネルギーを減らすように時間とともに大きくなることが知られている。

二つ相の体積比が大きい場合には,小さい液滴が蒸発し大きい液滴に凝縮する濃度拡散によりゆっくりと,また,体積がほぼ等しいときには,流体管のネットワークが形成され,その太い部分から細い部分へ向かって流が生し,太い部分がより太くなることで高速に構造が大きくなることが知られている。

一方,この中間の体積比の場合には,液滴が衝突合体することで粗大化が進むことが知られていた。この衝突合体は,液滴のランダムな熱運動の結果起きると長年信じられてきた。

研究グループは,液滴の大きさに応じて液滴周囲の濃度場が空間的に一様ではなくなるため,液滴の界面張力も一様ではなくなる結果,液滴の界面張力の勾配によるマランゴニ効果により界面張力が高い領域から低い領域に向かって力が働き,それによって流れが起き,その方向に液滴が決定論的に運動することを明らかにした。

これは,濃度の拡散と流体の流れによる物質輸送の結合の結果として捉えることができる。

この発見は,相分離が二つの相の体積分率によらず,つねに大きいドメインが小さいドメインを吸収して成長するという決定論的な法則,すなわち弱肉強食の原理に従っていることを強く示唆しおり,非平衡過程の時間発展の法則性を示したものだとしている。

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