京大ら,ポリマーを完全に混ぜる手法を開発

京都大学の研究グループは,九州大学および東北大学の研究グループと協力し,多孔性物質を鋳型とすることで,絶対に混ざり合わないと言われていたポリマーを分子レベルで完全に混ぜ合わせる手法を開発した(ニュースリリース)。

昨今ではポリマー材料のニーズがいっそう高度化・多様化していおり,種類の異なるポリマーを混ぜ合わせた「ポリマーブレンド」の作成により,新しい性質や機能を持った材料の開発が行なわれている。

しかし,ほとんどのポリマーブレンドにおいて異種ポリマーをナノメートルレベルで混合することは不可能で,それぞれのポリマーが数ミクロン程度の大きさで固まった相分離が起こる。これはフローリー・ハギンス理論においても,統計熱力学の観点から説明されている。

このため,あらゆるポリマーの組み合わせにおいて,分子レベルで混合できる方法の開発が望まれてきた。これまで,異種ポリマー同士を化学的に結合させたり,両方のポリマーに親和性の高い化合物(相溶化剤)などを加えたりする方法が考案されてきたが,いずれも欠点があった。

今回研究グループは,PCPの細孔内で異種ポリマーを順次合成し,その後,PCPを除去することで,ポリマー同士を数ナノメートル以下のレベルで混合することに成功した。この手法により,元来混合しない組み合わせのポリマーでも分子レベルで混合させることができ,低性能なプラスチック材料を大幅かつ合理的に高機能化できる可能性を示した。

この手法の特筆すべきところとして,様々なポリマーの組み合わせに適用ができるという一般性の高さも挙げられる。溶解度パラメータが大きく異なるため,常識的に混合するとは考えられない組み合わせのポリマーでさえ,分子レベルで混合させることに成功した。

この手法では,これまで混合できなかった汎用性ポリマーを数ナノメートル以下のレベルで合理的に混合させることに成功したことから,学術および産業的にも非常に大きな成果であるとしている。

現在,多くの産業の発展とともにポリマーブレンドの需要が高まっている。現在のポリマーブレンドの世界市場規模は約5兆円程度と推定され,毎年4.5%程度の伸びで益々拡大していくと予測されている。

研究グループは,この研究で開発したPCPによる鋳型法を利用すれば,あらゆる種類のポリマーを分子レベルで完全に混合できる可能性があることから,プラスチック材料の品質を大幅に高める目的や,これまでにない機能性材料を産み出す新技術として幅広い分野での利用が期待できるとしている。

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