NIMS,データ科学を推進する物質・材料研究ハブを開設

物質・材料研究機構(NIMS)は,データ科学的手法を物質・材料研究に取り込むことで,新規材料の開発を加速し産業イノベーションの創出につなげる戦略を打ち出した。

この試みはJSTイノベーションハブ構築支援事業として採択され,新しい物質・材料研究を進めるオープンイノベーションのハブ拠点「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ」を7月1日に物質・材料研究機構に構築する(ニュースリリース)。

物質・材料研究を第4の科学である情報統合型へと変革させる潮流が起きている。この変革を早期に新材料設計に実装できた企業が特許獲得や国際競争で圧倒的優位に立つことが出来る。

そのためには,物質・材料分野における膨大なデータ群の蓄積,最先端のデータ科学・情報科学の取込み等,大胆な新手法構築やデータベース等の基盤整備が必要であり,産学官の力を結集し集中的に取り組むことが求められる。

そこで,これらの取り組みを推進するため,物質・材料研究の中核的機関である物質・材料研究機構に,新しい物質・材料研究を進めるオープンイノベーションのハブ(情報統合型物質・材料開発イニシアティブ)を構築する。

このハブでは,結晶・フォノン構造,電子構造,ミクロ組織,界面,材料特性等の使いやすいデータベースの構築を進めるとともに,データ検索・可視化,機械学習,統計解析,シミュレーション等のデータ科学的なツールの開発を行なう。

これらのツールを新物質探索・設計パッケージとして機能させ,最先端の情報科学・データ科学を駆使した材料開発への実装を図る。こうして,産業界における物質・材料に関する課題・ニーズに対する有効なソリューションを短期間で開発・提供することを目指す。

具体的課題として,社会的に波及効果の高い蓄電池材料・磁性材料・伝熱制御材料等を取り上げる。ハブにおける連携機関は,企業17社,14大学,7研究機関,そして5つの海外研究機関と多岐に渡り,クロスアポイントメント制度等を活用して人材を糾合する。

将来的には,広範囲の物質・材料系へ展開し,人工知能の基礎技術等を取り込みながら,情報統合型の物質・材料開発システムを物質・材料研究機構内に構築することを見据える。また,新しい物質・材料研究手法の開発・蓄積・普及とそれに関わる人材育成を組織的に展開し,ハブの持続的発展に向けて取り組むとしている。

関連記事「名大,プラズマ医療科学の研究拠点「プラズマ医療科学国際イノベーションセンター」を開設