国立天文台ら,854個の「超暗黒銀河」をアーカイブで発見

国立天文台と米ニューヨーク州立大学の研究チームは,すばる望遠鏡アーカイブデータを解析し,かみのけ座銀河団の中に854個もの「超暗黒銀河」が存在することを発見した(ニュースリリース)。

かみのけ座銀河団は昔から研究が盛んに行なわれている銀河団にもかかわらず,2014年の終わりに47個の超暗黒銀河が初めて見つかり話題となっている。今回の研究で854個もの存在が確認されたことで,かみのけ座銀河団内での分布や超暗黒銀河の中にある星の種族が明らかになった。

超暗黒銀河は星の光だけみると我々の銀河系のわずか1000分の1の明るさにもかかわらず,大きさは銀河系と同程度にまで広がっているという,非常に淡い光の銀河。これだけ「淡く広がった」天体は通常なら銀河団内部の潮汐力で簡単に破壊されてしまう。

それにもかかわらずこれだけ多くの超暗黒銀河が銀河団に発見されたことから,光では見る事が出来ない大量の暗黒物質が存在し,その重力が星を銀河内部にしばり付けているのではないかと考えられる。力学計算から,星などの光で見える物質はたった1%以下で,残りの99%以上は暗黒物質が占める「超暗黒銀河」であると考えられている。

今回すばる望遠鏡により,超暗黒銀河内部での星の分布や色を測定することができた。これにより,超暗黒銀河が古い星の種族で構成された古い天体であることが判明した。

さらに,かみのけ座銀河団の中での分布は他の銀河と同じように中心集中していることから,銀河団の外から最近落ちてきたものではなく,銀河団内に古くから存在していたようであることも分かった。

光で見える物質がたった1%以下という超暗黒銀河の質量比は,宇宙の平均と比較しても極端に低い。銀河が形成された後に何らかの形で星の材料となるガスが失われ,星を作るのをやめてしまった結果だと考えられる。

今回の研究で超暗黒銀河が銀河団に特に多く存在することも判明したことから,ガスが失われた原因は銀河団という環境に特有のものであると研究チームは指摘している。

「星」の性質に注目した研究と同時に,超暗黒銀河中で99%以上を占める暗黒物質の研究も重要。暗黒物質を直接見ることはできないが,超暗黒銀河内の星の運動の測定から暗黒物質の分布を探ることができる。更なる観測のために,日本を含む5カ国の協力で建設が始まっている次世代超大型望遠鏡 TMT(Thirty Meter Telescope)の完成が待たれている。

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