富士フイルムは,肌の見え方と肌の状態の関係について研究を行ない,輝くようなツヤがある肌は肌内部の細胞構造の乱れが少ないこと,また,人が顔を見た時に弾力性がある印象を受けるハリ感(以下,「視覚的ハリ感」)の知覚には頬部のツヤが重要であることを明らかにした(ニュースリリース)。
同社は今回,女性を視覚的に若々しくみせる要素である,「視覚的ハリ感」に着目。人は顔のどこを見て「視覚的ハリ感」を感じているのか解析を行ない,頬部のツヤが「視覚的ハリ感」に大きく影響していることを確認した。さらに,開発した独自の光学画像シミュレーションシステムを用い,「視覚的ハリ感」を生み出すために必要なツヤの要因を調査した。
肌がどのような構造になっていればツヤがあるように見えるのかを解明するため,女性被験者の肌表面と肌内部の状態を解析した。肌内部については,肌内部での光の状態を解析する独自の解析システム「ワンショット紫外-可視分光OCT」を用いて肌の断層画像を取得し,表皮や真皮層における光の挙動の定量解析を行なった。
その結果,ツヤの目視評価が高い被験者ほど,肌内部における細胞構造の乱れが少ないことを示すデータが得られた。これにより,細胞形状や細胞屈折率のムラなど細胞構造の乱れが抑制されることで肌内部に入る光の量は多くなり,しっかりとしたツヤになると推定した。
また,肌表面についてマイクロスコープを用いて肌画像を取得し,従来から知られている通り,肌表面の凹凸形状であるキメが荒くなると肌のツヤが減少することを確認した。
また肌モデルに光を当て,その時の光の挙動をコンピュータ上で計算し,肌の見え方をシミュレーションすることができる独自の光学画像シミュレーションシステムにより,微細な細胞構造の乱れを抑制することでしっかりとしたツヤになることを実証できた。
ナノ~マイクロメートルオーダーの微細な構造に対する光の反射・散乱といった挙動を計算する光学特性計算部と,光学特性計算部で計算された光の挙動が肌のキメなどのテクスチャに対してどのような見え方になるかを計算する可視化部で構成。
2つの計算部を結合することにより,従来実現できなかったナノメートルオーダーの微細な細胞構造の変化を肌の見た目の違いとして再現することが可能になった。
視線追跡装置を用いて,人は顔のどこを見て「視覚的ハリ感」を感じているかを解析したところ,「視覚的ハリ感」を評価する際,顔の頬部周辺に視線が集中していることが分かった。また,「視覚的ハリ感」の知覚には,たるみやシワよりも,頬部のツヤが大きく影響することが分かった。
今回の光学画像シミュレーションおよび解析結果により,肌表面だけでなく肌内部の細胞構造の乱れを整えることでツヤがある肌になり,「視覚的ハリ感」が向上することが示唆された。同社では今回の研究結果で導き出した条件を満たすことで肌のツヤを向上させ,視覚的ハリ感を生むスキンケア化粧品の開発に応用していくとしている。
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