富士キメラ総研は,「有機エレクトロニクス」「プリンテッドエレクトロニクス」の関連製品,部材,装置の市場規模,長期予測,用途動向,メーカ動向,技術開発動向などと共に,「フレキシブルエレクトロニクス」の動向を調査し,その結果を報告書『2015 有機&プリンテッドエレクトロニクスの将来展望』にまとめた(ニュースリリース)。
電界発光,光電変換,半導体機能などの特徴がある機能性有機材料を用いた有機エレクトロニクスは,特性に応じてさまざまな用途で展開されている。また薄型,軽量,柔軟性を特徴とし,基板上に塗布・印刷することによって素子形成が可能であるため,プリンテッドエレクトロニクスの適用が期待される。
プリンテッドエレクトロニクスは印刷,塗布技術を生産プロセスの一部または全てに用いて電子回路を形成したエレクトロニクス製品を指し,「設備投資の費用削減」「大面積・薄型シートデバイスの実現」「材料ロス減少によるコスト削減」「低コストかつ多品種小ロットでの生産」「フレキシブルデバイス製造」などのメリットがある。
有機エレクトロニクス製品市場は,2015年から2020年はスマートフォンなどに採用される中小型AMOLEDが堅調に拡大すると予測している。また2015年以降TV,サイネージ,ノートPC,タブレット端末向けに採用される大型AMOLEDの市場が立ち上がり,全体市場をけん引する。有機ELディスプレイのほか,塗布プロセス化の進む有機EL照明が2030年まで高成長を維持するとみる。
プリンテッドエレクトロニクス応用製品市場は,電子部品を構成する素子や回路などを印刷や塗布技術を用いて形成したデバイスで,有機エレクトロニクス製品を除くプリンテッドエレクトロニクスの適用が期待される製品を対象としている。
印刷プロセスにより製造されるセンサデバイスは2014年から2020年にかけて非常に高い成長を予想する。フレキシブルデバイスへの電源供給を狙いとした折り曲げが可能なフレキシブル電池の市場が2020年代に大きく拡大するとしている。
タッチセンサはスマートフォンなどモバイル端末で堅調に拡大するとみており,車載向けも採用が拡大することから長期的な成長が期待できるとしている。フレキシブルプリント配線板も主用途であるスマートフォンやタブレット端末の市場と連動し,成長が続くとみている。
有機&プリンテッドエレクトロニクス関連材料の世界市場は,AMOLED向けに採用される有機EL発光材料,低分子有機薄膜材料,円偏光板が拡大をけん引している。2015年以降フレキシブルデバイス向けで封止用シール材,ハイバリアフィルムの需要が急速に高まるとしている。ハイバリアフィルムはフレキシブルAMOLED以外にも,有機EL照明,有機系太陽電池向けで拡大が期待されるという。
基板は2014年市場の大半をガラス基板が占める。今後フレキシブルAMOLED向けに耐熱性に優れたPIフィルム需要が高まるとみられ,大型AMOLED,有機EL照明向けにフレキシブルガラス基板が拡大するとみる。PETフィルムはPIフィルムやPENフィルムと比べ安価であることからバリア性や耐熱性の要求が比較的低い用途を中心に採用されるとしている。
導電・絶縁材料ではタッチパネル向け導電性メタルペーストが2014年の市場の大半を占める。導電性ナノインク,導電性高分子,CNT,絶縁性インクはプリンテッド化に適した配線・絶縁材料としてこれから2030年にかけて大きく成長するとみている。